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| タイトル | 日 時 |
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七 闇に潜みしもの(5)
確保した身柄の逃走事故は、走っている護送車両が停止したとき、護送車両から取調室に連行しようとしたとき、さらには取調べ中にも起こっているが、それらは特別な事例であって、もっとも頻繁に起こっているのは摘発場所においての逃走だ。 そんな経験を何度も味わっている九鬼は、いつも部下たちにくどいくらいに言い聞かせていた。 『いいか、人間の注意力なんてものを信頼するな。それぞれがお互いに補完し合うんだ。 ほっと一息ついたとき、他の誰かも見ていると思ったとき、こんなに大人しいのだからと思ったときにこ... ...続きを見る |
2008/08/14 16:09 |
七 闇に潜みしもの(4)
店内からの護送の手際については、漫然と付いて行くだけの警備官がいたことを除けば、流石に大林が手配しただけあって、配置の人数や人選なども取り敢えずは合格だ。 摘発に当たって、現場で身柄を選別確保することも、着手してから騒然とする店内を制圧するまでに、迅速さと正確さを要求されるが、実際に一番危険な状態と言えるのは、確保した身柄を護送するときである。 特に店内から外に連れ出すときは、静の状態からから動の状態に移ることになり、この様な状態のときにこそ細心の注意を払っておかなければ、思いもよらな... ...続きを見る |
2008/08/11 14:36 |
七 闇に潜みしもの(3)
「うまくいったようだな」 男は下りてきた女たちの顔をゆっくりと確かめると、そう言って階段を上り始めた。 ゆっくりと階段を上がると、灯りの消えた店に入ると、中にいた女たちを引き連れて、再び階段を下りはじめる。 「俺の言うとおりにすれば、大丈夫だ。まあ、何と言っても奴らの遣り口を、一番よく知っているんだからな」 誰に言うとも無くそう呟くと、胸元の小さな袋を握り締めた。 そうすることで、男の不敵な顔が急に柔和になるのを、見ている者はいなかったが、その瞬間だけ男は真実の姿を曝け出してい... ...続きを見る |
2008/07/30 14:11 |
七 闇に潜みしもの(2)
先頭の男が誘導するように、女たちが数珠繋ぎになって階段を下りてくる。最後尾にも男が一人、辺りを油断無く見回しながら、階段をゆっくりと下りてくる。 「車はどこだ」 「ここは狭いので、大通りに止めてあります」 「周囲に注意して、警察官と連携をとって、護送しろよ」 「はい、わかってます」 女たちを護送する集団が、大通りに出てしまうと、辺りは又もとの静寂を取り戻した。 ...続きを見る |
2008/07/24 14:31 |
七 闇に潜みしもの(1)
照明の薄暗い階段の下に、男はじっと身じろぎもせずに周囲の様子を伺っていた。 誰もその存在に気付いてはいないのに、男は呼吸音を極力抑えて、じっと同じ姿勢を続けている。 それでも落ち着かないのか、胸元に手を当てて、何かを握り締めると、目を瞑って唾を飲み込んだ。 「まだ、出てこないのか。まさかガセじゃないだろうな」 男は携帯電話を取り出すと、着信履歴を確認する。 「八時半に店に入ったと言っているから、もうかれこれ一時間近くになるじゃないか、まだ終わらないのか」 男が舌打ちをしたそ... ...続きを見る |
2008/07/15 14:47 |
国籍法第3条について考える
フィリピン人母の婚外子10人に日本国籍 最高裁判決2008年06月04日15時13分(朝日新聞) ...続きを見る |
2008/06/06 15:39 |
イラン人による薬物事犯の話(カラムの思いは伝わらない)
<覚せい剤密売>イラン人逮捕 東京の住宅街で主婦相手に [ 05月22日 02時30分 ] 東京都杉並区の住宅街で主婦らに密売する目的で覚せい剤や大麻を所持していたとして、関東信越厚生局麻薬取締部が4月、イラン国籍の杉並区阿佐谷北4、無職、ファリド・ヤズダニ容疑者(38)を覚せい剤取締法違反(営利目的所持)などの疑いで現行犯逮捕していたことが分かった。都内では1月にも世田谷区で主婦らに密売していたイラン人が逮捕されており、捜査当局の監視の目の緩い住宅地で薬物汚染が広がっている実態が改... ...続きを見る |
2008/05/22 15:01 |
六 内偵調査(10)
帳場にいる警備官は、質問書の内容を入国管理局のデータベースに照会を掛けて、時に補足したり、時には修正したりして該当するデータを引き出す作業に取り掛かっている。 「大林はまだ戻らないのか」 入管側の総指揮官である大戸課長補佐が、遅々として進まない人定作業に苛立っているのか、大林の姿がそこにないことが悪いのだと言わんばかりに、周りの者に大林警守長の所在を確認するように、先ほどから何度も指示していた。 そこに大林が、捕まえた女たちを誘導して会議室に入ってきた。 「遅いじゃないか、大林君ら... ...続きを見る |
2008/05/03 21:38 |
六 内偵調査(9)
店舗ごとに色分けされたプレートを胸につけたホステスたちが、入国警備官を相手に何事か大声で言い争っていた。 身分を証明するものを何一つ持っていない者と、不法入国や不法残留している者、そして観光を目的として上陸許可された者などの、働いてはいけない者たちが混在した状況の中で、入国警備官たちはそれぞれの違反事実を一つ一つ明らかにする作業に取り掛かっていた。 旅券や外国人登録証明書によって、身分事項と違反事実が特定できる者は徐々に振り分けられて行き、何も持っていない女たちだけが質問書と名付けてい... ...続きを見る |
2008/04/30 13:56 |
六 内偵調査(8)
集合場所の警察署が近いこともあって、九鬼たちは徒歩で摘発先にやってきていた。車両を回して搬送するにしても、四人なら一回で済むが、十二人となると三回に分けて搬送しなければならない。九鬼の決断は早かった。 「いや、八人は身分事項を控えるだけでいい。不明の四人を乗せる車両を要請してくれ」 大林にそう命じた九鬼は、ひとり店の入り口に向かうと、そっと階段を降りていった。 「はい、そうです。一斑の摘発先です。身柄四名、違反事実等は不明です。署まで搬送したいので、ワゴン車を一台回してください」 ... ...続きを見る |
2008/03/25 10:17 |
六 内偵調査(7)
「東京入国管理局です」 薄暗い店舗の中に、九鬼の低い声が轟いていた。どかどかと一斉に立ち入ってきた入国警備官を見て、それまで嬌声が絶えなかった店内に、奇妙な静寂が訪れた。 このように一気に店内に侵入し、動く間もなく大声で制圧するのが、九鬼のいつものやり方だった。 店内に散った入国警備官は、前もって担当を決めていたボックス席のホステスたちを、一箇所に集め始める。 各自が一人一人の身分事項を確認しては、違反が疑われる者と違反を問えない者とに振り分けて、それぞれまとめて座らせる。 「... ...続きを見る |
2008/03/12 15:12 |
六 内偵調査(6)
「大林さん、どうして俺があの人と一緒に行くことになったんですか」 子供のように尖らせた口で、小山は初めての内偵調査の相方に不満を漏らしていた。 「どうしてって、畏れ多くも課長補佐で在らせられる」 「だからどうして俺には補佐が付いてくるんですか。俺が補佐に嫌われているのは、大林さんも知っているじゃないですか」 『だからなんだけどなあ』という言葉を胸にしまったまま、大林は九鬼に言われたままに答えることにした。 「課長補佐と一緒に行くと言う奴が、どこにもいないんだよ。お前ならきっと大戸さ... ...続きを見る |
2008/02/27 08:00 |
仮放免が許可されました(永住者の退去強制について)
退去強制令書発付処分の取り消しを求めて訴訟中の事件で、牛久に収容されていた原告の女性の仮放免が、2月7日に許可された。 俺の知る限りでは、三度目の申請だったはずだ。三回目の申請と言うのは、仮放免許可申請に限らず、その他の許可申請についても、色々言われて不許可や不交付であったものが、許可されるタイミングでもある。 仮放免を許可されると言うのは、行政訴訟の行く末(判決の内容)にも影響を与えるものだし、少なくとも入管側が収容を継続する意味を持たなくなったと言うことを表明しているものだと受け取... ...続きを見る |
2008/02/09 13:28 |
続 東京地裁へいらっしゃいませんかの続報
過日行われた公判でのこと。本人尋問と夫の証人尋問をやることになった。しかも4月以降にずれ込むことに。本人尋問はこちらが希望してのもの。裁判官自らが、原告のタイ人女性を見ることは、これは第一審でも勝訴判決が出るかもしれないなと、そう思っている。 事実認定にかなり危ういものがあるので、いずれかの場面で、和解案を裁判所が提示するか、入管側が折れてくるかと思っていたが、もうすっかり弁護士は、判決をもらうつもりになっている。(もちろん原告勝訴の判決だ) 今後も公判の予定は、随時お知らせしますので... ...続きを見る |
2008/02/01 11:30 |
続 東京地裁へいらっしゃいませんか(「永住者の退去強制」)
以前、お話した「永住者」で日本人の子供がいる女性の退去強制令書取り消し訴訟の第二回公判が、 1月23日(水) 13時30分から 東京地裁712号法廷 で行われます。 俺の感触では、もう一・二回で終わるような気もするが、そうなると控訴を考えなければならなくなるのかな、そう思っています。 できれば、陳述書ではなくて、本人尋問を行ってもらいたいのだが・・・ お時間がある方は、是非、いらしてみて下さい。もし、俺に気付かれましたら、気軽に声を掛けてください。 行政訴訟がど... ...続きを見る |
2008/01/16 08:47 |
マル特と出国命令制度の空白
出頭申告した不法残留者について、収容手続きを執らないで、出国させるマル特手続きとそれとほぼ同じ意味合いを持つ出国命令制度の間に、空白の期間があることはご存知だろうか。 俺は不勉強で、先日、初めてそれを知った。 退去強制された者の上陸拒否期間は、長期、短期と言って、ずっと昔には、永久拒否とされるものと、一年拒否とされる者との二種類であったのが、200年(平成12年)2月18日、一般の退去強制者の上陸拒否期間が五年に伸長なったときから、いわゆるマル特手続きを執った者についても五年拒否とされ... ...続きを見る |
2007/12/25 10:10 |
六 内偵調査(5)
そこに不法入国した者がいるのか、不法残留した者がいるのか、それとも不法就労している者がいるのかを、確認してきちんと証明しなければ強制調査ができない。 任意調査という方法が基本なのだが、悪質な法違反を摘発するという目的のためには、裁判所の許可状に基づく強制調査に勝るものはない。 あやふやな情報の中から、内偵調査や張り込みによってより確度の高いものを選別し、摘発先の選定をする。 東京都内だけでも何万店とある飲食店舗の全ての情報を収集するのは容易なことではなく、それが役所に居乍らにしても... ...続きを見る |
2007/11/29 08:13 |
六 内偵調査(4)
「小山を内査に行かせようと思うのだが、お前は誰と組ませたらいいと思う」 「集中月間の内偵調査ですか。小山にはまだ早いと思いますが・・・」 「昇任試験には受からないが、あいつももう五年目のシーズンに入っている。そろそろ独り立ちしてもらわないとな。小山の自主性を認めてやれるような者で、しっかりした者を付けたいのだが」 飲食店舗の摘発には、内偵調査が欠かせない。毎日のように手紙や電話で寄せられる外国人がホステスとして、または売春をしていると言った内容で寄せられる情報には、不確かな内容のものが少... ...続きを見る |
2007/11/19 09:13 |
東京地裁にいらっしゃいませんか(「永住者」に対する退去強制令書発付取り消し訴訟)
日本籍の子供を有し、「永住者」として在留していた者が、刑罰法令に違反し、退去強制令書が発付された。 刑事裁判が終わり、身柄が入管に引き渡された後も、関係者の誰もが違反調査、違反審査、口頭審理、そして異議の申し出による法務大臣の裁決によって、在留特別許可されると思っていた。 当初は、口頭審理の段階で弁護士をつけることにしていたのだが、ことを安易に考えたのか、直前になって、弁護士を解任してしまった。 裁決結果は予想に反して、強制退去という結論だった。 ...続きを見る |
2007/11/13 14:13 |
「在留特別許可」について考える
在留特別許可に関する法務大臣の裁量権について ...続きを見る |
2007/11/09 13:04 |
六 内偵調査(3)
一枚の紙が九鬼の机の上に広げられていた。そこに地区別に書きこまれた飲食店舗の名前の横に、九鬼は警備官の名前を書いては消していた。 「大林はいるか、大林」 九鬼は大きな声を張り上げると、部屋中に響けとばかりに、大林警守長を呼んだ。 総務課のお下がりのコピー機は、その時も紙詰まりを起こして、大林を汗だくにしていた。 「何ですか、班長。傍にいるんですから、そんなに大きな声を出さないでください」 自然と大林の返事も鋭くなっている。 「あ、うん。見えなかったからな」 九鬼は目の前に... ...続きを見る |
2007/11/08 15:34 |
六 内偵調査(2)
高校時代、優等生として通っていた小山は、成人した後でも、どうしても外せない付き合いの酒席には出るが、その流れから二次会に誘われても、殆ど参加することはなかった。 そんな小山を女性に興味がない変わり者だと見る者もいて、同性愛者ではないかとまで言う者もいた。だが小山はそんな周囲の声に、否定するでもなくまた肯定するでもなく、無関心を装って相手にしていない様子だった。 もちろん小山は年齢相応に成長を遂げており、女性に対する興味自体はあったのだが、自分から進んで風俗関係の飲食店舗に遊びに行こうと... ...続きを見る |
2007/11/02 15:24 |
六 内偵調査(1)
その店に近付くにつれて胸の鼓動が高鳴り、心臓から規則正しく送り出される血流が、耳の奥の方で脈打つのが、今では少し心地よい。 緊張していた。 街路灯が煌々と照らし出す光景が、一歩そのビルの玄関に足を踏み入れたとたんに、暗幕を下ろしたように真っ暗な闇が、一瞬にして小山を包み込んだ。 何度も確認した筈だったが、その先に続く階段の果てに、あの桃源郷のような場所があるとは、未だに信じられない思いを小山は抱いていた。 高校を卒業して入管に入ってから三年が経とうとしているが、あのような飲食店... ...続きを見る |
2007/10/31 08:53 |
五 潜伏する者たち(11)
「奥様になられる方は、外国人登録もご一緒に済ませておいてください」 市民課の親切な職員の言葉を聞いているのかいないのか、書類を提出した二人はそそくさとその場を離れると、駐車場に向かった。 大きなワゴン車の中には、いま婚姻届を出したカップルの様子を食い入るように見つめている男女が、気持ちを落ち着かせるように深呼吸を繰り返していた。無事に届出を済ませた二人が戻ると、もう一組のカップルが入れ替わりに市民課の窓口に向かった。 ...続きを見る |
2007/10/26 07:17 |
五 潜伏する者たち(10)
妙な取り合わせの男女だった。どこか似つかわしくないだぶだぶのスーツ姿の男に、それに寄り添う女との年齢も微妙に離れすぎている。腕を組んで歩いている姿もぎこちなく、どこかよそよそしいのだ。 「婚姻届はこちらの窓口でいいのかい」 浦和市役所の市民課、戸籍係の窓口に不釣合いなカップルが、それでもしっかりと手を繋ぎあって、婚姻届け出用紙を窓口の係官に差し出した。 窓口の係官は、用紙を受け取るときにふと眉をひそめたが、用紙から目を上げたその表情は、いつもの親切な市役所の職員の顔だった。 ...続きを見る |
2007/10/23 07:29 |
五 潜伏する者たち(9)
ホアホアは念入りにハンカチで携帯電話を拭くと、真新しいハンカチを躊躇いもなく駅のゴミ箱に放り投げた。 「そろそろ潮時なのかな。役には立ったが、いい加減うざいな。そうかと言って亭主をどうこうするわけにもいかんしな。いい加減亭主が構ってやればいいのに」 そのときちょうどやってきた電車に飛び乗ると、ホアホアはぶつぶつ呟きながらも、周囲に不審な人物がいないのを確認することは怠らなかった。 ...続きを見る |
2007/10/20 08:49 |
五 潜伏する者たち(8)
電車の中では説得できそうにないと考えたホアホアは、仕方なく電車を降りるとホームの端に移動した。 「何を小娘みたいな駄々を言ってるんだ。今日は駄目だって言ってるだろう。本当に今日は忙しいんだ。俺だって会いたいよ。だけど仕事をきちっとしなきゃ、俺の身が危うくなるんだよ。わかってくれよ。シャオチュン」 ホアホアは君子を中国風に呼ぶことで、歯の浮くようなせりふを、表情を変えずに言うことができた。 シャオチュンと呼ばれた君子は、最初の勢いは何処へやら、すっかりホアホアのペースに乗っていた。 ... ...続きを見る |
2007/10/18 07:19 |
五 潜伏する者たち(7)
緩やかな振動が、いつものように眠り込んでいたホアホアを、現実の世界に引き戻した。 胸ポケットから震えている携帯電話を取り出すと、表示された電話番号を目にしたホアホアは、急に眉間の皺を濃くすると「ちっ」と舌打ちをする。 駅のホームに降り立ったホアホアは、忌々しいものでも見るような目つきで、携帯電話に表示された番号をじっと見つめていたが、振動が止まないのを見て取ると、受信ボタンを押して耳に押し当てた。 「今日という今日は、絶対に会って頂戴よ。約束よ。そうしてくれなければ、私にも覚悟がある... ...続きを見る |
2007/10/16 07:13 |
五 潜伏する者たち(6)
思い切りが良ければ、ほんの少しの決断力があれば、隣で太平楽に眠りこけている中国人の男を、今ここで橋の上から投げ落としたなら、どれほど痛快な気持ちになれるだろう。 運転する日本人の男は、新宿に拠点を持つ広域暴力団の末端構成員だった。時と場所そして場面によっては、それなりに肩で風を切ることができた頃もあった。 それが今では中国人組織に運転手として雇われ、言われるままに自動車を運転して、何とか凌いでいる有様だ。 「しゃれにならん奴らだからな、こいつらは」 男は隣で眠りこける太った男に聞... ...続きを見る |
2007/10/14 06:58 |
五 潜伏する者たち(5)
こわばった表情のまま運転する男は、それっきり口を開くことをやめた。 太って柔和な表情をした柔らかい物腰の男が、見かけによらず凶暴であることを思い出したのだ。 太った男はその様子に満足したのか、口笛を吹きながら中国語の新聞を読み始めた。 早朝の首都高速五号線をひた走ったパネルバンは、荒川を越えて戸田市内に入ると高速道路から一般道に降りた。 気まずい雰囲気の中で太った男は、やがて大きな鼾をかいて眠っていた。 運転する男は金のためとはいえ、中国人の使い走りのようなこの仕事について... ...続きを見る |
2007/10/12 07:19 |
五 潜伏する者たち(4)
銀色に輝くパネルバンが首都高速五号線を、右に左に車線変更を繰り返し渋滞の中を要領よく走っている。 「戸田の倉庫でいいんだな」 運転席に座る男が、助手席の太った男に確認する。 「ああ、車を止めたらあんたはもう帰っていい」 「今日は何人乗っているんだ」 「あんたは箱を移動させるために雇われているんだ。余計な事に口を挟まない方がいいぞ。いなくなった日本人は多いからな、もんもん背負ってるからと言って特別じゃないぞ」 太った男はそれまでの柔和な表情を一変させて、凶悪な表情で吐き捨てるよう... ...続きを見る |
2007/10/10 07:24 |
五 潜伏する者たち(3)
「外国人がいるんだよ」 「嘘だろう。日本人だってお母さんが言ってたよ」 「探検してみようよ。歩道橋の上から見ると良く見えるんだ。付いて来いよ」 子供たちは楽しそうな歓声を上げて、歩道橋の上に駆け上がった。 「な、良く見えるだろう。窓を開けっぱなしだから部屋の中まで丸見えだ」 「ねえ、グランドに戻ろうよ。人の家を覗いたりしたら怒られちゃうよ」 「大丈夫だよ。怪しいアパートの探検なんだから」 小さな身体を寄せ合って最初に覗きこむのが誰なのか、互いに自分以外の誰かが覗き込まないかと様子... ...続きを見る |
2007/10/08 07:19 |
五 潜伏する者たち(2)
「第五平和荘と言うくらいだから、他にあと四軒のアパートがあるのかしら。それにしても得体の知れない人の出入りが多いわねえ」 「でも日本人だから良いじゃないの。何でも他のところの話では、アパートに外国人が集団で住み付いて、近所迷惑この上ないって話を聞いたことがあるわよ。 それにしてもあの怪しげな様子じゃ、小さい子供を外で遊ばせるのも憚られるわね」 第五平和荘は一戸建て住宅の中に、一つ取り残されたようにたっている古びたアパートだった。 近所の住人の話では、農地から宅地への造成が進んでいた時... ...続きを見る |
2007/10/06 09:04 |
五 潜伏する者たち(1)
浦和という名の付くJR東日本の駅は七つある。浦和駅を中心に東西南北を冠する四つの浦和駅と、武蔵浦和駅と中浦和駅の計七つだ。 埼玉県庁に間近い浦和駅の周辺こそ開発が進み、商店や会社のビルが立ち並んでいるが、西や東に一歩外れるとそこには田園風景が広がっている。 新興住宅街を有する田園風景の中に、近所付き合いもなく多くの住民が移り住んで来ては、新たな街並みを形成して行く。 田畑や沼地だったところに建設され売り出された住宅は、それこそ飛ぶように売れた。そして街としての機能が追い付く間もなく... ...続きを見る |
2007/10/04 07:22 |
四 蠢く人々(8)
富樫はホアホアの働きによって莫大な利益を受けていることから、山田君子が何を言ってきても邪険に扱うことができないでいるし、そんな二人の間柄を知っている君子の声は、自然と高く鋭くなるのだった。 「だけど仮にいま離婚したとしても、すぐに結婚するという訳にはいかないだろう。男の方は大丈夫でも、女のあなたは六ヶ月経たなければ再婚できないのだから」 富樫がそう言うと君子は、そんなことは承知しているとばかりに吐き捨てるように反論した。 「私が言いたいのは、何であの女と切れないかっていうことなの。私と... ...続きを見る |
2007/10/02 07:14 |
四 蠢く人々(7)
意を決した山田君子は、富樫の事務所に押しかけていた。 柳眉を逆立てて詰め寄る中年の女に、富樫はもう二時間も相手することを強いられていた。 頭に血が昇った女を相手にすることなど、いつもの富樫になら何でもないことなのだが、その日は勝手が違っていた。 女の言うことの一つ一つが、ホアホアから聞いていた内容を遥かに外れていて、富樫をいつにない困惑の中に放り込んでいた。 「もう一緒になったのも同然じゃないの。私の夫名義の旅券を使っているんだから、あの人は私の夫ということでしょう」 君子は... ...続きを見る |
2007/09/30 07:37 |
四 蠢く人々(6)
それ自体は喜ばしいことだったのかもしれないが、統制経済の国から来た二人が互いに支え合って築いた生活を、ひとたび贅沢な暮らしを味わってしまったことが、少しずつ二人の歯車を狂わせる結果をもたらしていた。 いま住んでいるマンションも二人には広すぎるのだが、仲間を呼んでパーティーを開きたいというのが、そこに決めた理由だ。 だがいまはそこに二人ともほとんど住んではいなかったし、訪ねてくる友人もいない。 そんなマンションを使っても良いと言われても、ありがた迷惑なだけでメイランはちっともうれしく... ...続きを見る |
2007/09/28 07:13 |
四 蠢く人々(5)
「富樫か・・・。 まあいいさ、それよりこのマンションはどうする。俺は新宿に行けば生活する場所にはこと欠かないから、取り敢えずお前に残して置いてやるよ」 最後のこの時もホアホアは、メイランの期待を裏切る言葉しか与えてくれなかった。 二人は結婚して五年になるが、子供には恵まれなかった。留学生として日本に来て、入管の手続きをしてもらうことになった行政書士の紹介で知り合ったのだ。 結婚した当初の二人は、双方の両親からの仕送りとアルバイトで、何とか生活して行けるといった生活だった。 そ... ...続きを見る |
2007/09/26 07:19 |
四 蠢く人々(4)
「もう一緒に生活していても、しょうがないわね。あなたは自分を見失っているようだし、私があなたにしてあげられることも、もう無いようですものね」 そう言うメイランの視線は窓から遠く外に向けられており、夫の視線を避けるように硬い表情をしていた。 「好い男でもできたか。お前は俺の言うとおりにやっていればいいんだ。それに離婚したら、いま持っている家族滞在の更新はできないんだからな」 ホアホアは半ば予想していた妻の申し出に、未練たらしい夫の役割を演じたくないと思っていたのに、いちばん言ってはならな... ...続きを見る |
2007/09/24 06:00 |
四 蠢く人々(3)
日頃から外国人を相手に仕事をしていることで、外国人を冷静に見ることができると思っていたが、抑え切れない衝動が片岡を突き動かして、毎日のようにメイランに電話を掛けないではいられなかった。 中国人の女性と付き合っていることは、もちろん役所の者には秘密にしていた。職務上知り合った女性と交際することは、理由がどうあろうとも御法度とされているのだ。 たとえ携帯電話を拾ったのが縁で始まったと言っても、誰もそれをそのまま信じる筈がないと思った。 正直なところメイランの片岡に接する態度は、付き合っ... ...続きを見る |
2007/09/22 07:39 |
四 蠢く人々(2)
だが良く見るとそれは中国人の女ではあったが、さっきまで片岡の頭の中を支配していたメイランではなかった。 携帯電話を拾ったことがきっかけとなり、片岡は週に一度はメイランと会うようになっていた。 連れの女を片岡に紹介するのがメイランの目的だったので、片岡にそのつもりがないことを敏感に察知した彼女は、少しずつ距離を置こうとするようになっていた。 だがそのとき既に片岡の方が熱を上げ始めて、いつもの片岡にはない積極性を見せていた。 それまで役所の上司から持つように勧められても、いつも縛り... ...続きを見る |
2007/09/20 07:20 |
四 蠢く人々(1)
メイランに出会ったあの日から片岡は、ぼんやりと外国人登録係の窓口に座っていることが多くなった。 何度もメモ用紙の上に目を落としては、ぶつぶつと何ごとか呟いたかと思うと、回りにもそれと知れるような大きな溜め息をついた。 心ここにあらずといった様子なのだが、仕事それ自体はそつなくこなしているので、普段と様子の違う片岡に注意を払う者はいなかった。 「外国人登録はここで良いのですか」 片岡の前に女が立っていた。 その声に、はっと我に返った片岡の視線に、メイランの姿が飛び込んできた。 ... ...続きを見る |
2007/09/18 07:03 |
三 人事異動(13)
「成田空港には、私の方から手配しておきますが。あまり期待はできません。せいぜい山田和夫名義の旅券を使う男が、いつ日本を出ていつ戻ってきたのかが、ずっと後になって分かるだけかもしれません。 それでも何もしないよりは、できることはした方が良いと思います。いや、きっと役に立つはずです」 そう言うと九鬼も海老川の顔を、じっと見つめるのだった。 九鬼は自分たちがこのような事件をやるために、摘発をしていると必ず発生する在宅事件の処理を、島田というこの四月に転勤して来る班長に押し付けた格好になって... ...続きを見る |
2007/09/16 09:17 |
三 人事異動(12)
「その日本人の男名義の旅券を取得しできたのですから、その男の近辺に関係者乃至は本人がいる筈だ。 取り敢えずしばらくは、その中国人の男がどこに住んでいるのか、そいつを特定するのが先ですね」 如何に注意をされても、九鬼の声の大きさは変わることがなかった。 「では、我々は引き続き山田和夫の身辺を洗うことにします。 何、大きな事件になりそうですから、これに掛かりっきりになっても外事課長も文句は言わないでしょうよ。 ただそれには何としても、裏に隠れている者をきっちりと炙り出さねばなりませ... ...続きを見る |
2007/09/14 06:40 |
三 人事異動(11)
「それじゃあ、やはりその日本旅券を使用しているのは、旅券名義人ではないということですか」 「そうです。九鬼班長。 旅券の名義人は旅券を取得したこともなければ、海外に行ったことは一度もないというのですから。誰かが成りすまして取得したか、偽造の日本旅券かということになりますか」 小柄な海老川は背筋を伸ばして乗り出すようにして顔を九鬼に近づけると、まるで他の者に聞かせてはなるまいとでもいうように囁いた。 「その日本旅券を使っている者だけを捕まえても、面白くないな。せっかくこうして警察と合同で... ...続きを見る |
2007/09/12 07:33 |
三 人事異動(10)
何しろ最終的には、在留を特別に許可するという決定を受けることが予想される事案であっても、容疑者と関係者の供述を録り、実態調査と呼ばれる容疑者の生活状況の調査などを行わなければならず、通常の違反調査の何倍もの時間と人手を要するのだった。 その足枷が担当地域の変更とともに一気に解決できるとしたなら、誰もが望むところではあった。 島田警備士の転勤を好機とばかりに、それを九鬼は提案したのだ。 九鬼の提案の骨子はこういうことだ。 摘発第一班は東京都、埼玉県、群馬県を、摘発第二班は山梨、長... ...続きを見る |
2007/09/10 07:08 |
三 人事異動(9)
東京、埼玉、群馬であれば県境を接しており、合同摘発に積極的な埼玉県警を介して、消極的な群馬県警や入管を利用したがる警視庁とも、合同摘発をやる回数を質量ともに増やせると九鬼は目論んでいた。 それには飛び地のような担当地域より、県境を接して高速道路や鉄道網により繋がっている担当地域を持つほうが、より効率的且つ効果的に摘発を計画できると九鬼は考えたのだ。 警察との合同摘発では、摘発したその日の内に殆んど事件処理が終わってしまうのだが、中には不法残留後に日本人と結婚している者もいて、そのような... ...続きを見る |
2007/09/08 09:25 |
三 人事異動(8)
例年の人事異動時期には本人の希望を汲み取っているが、それがそのまま希望通りになるとは限らない。 あまり一箇所に長くいるとそろそろ異動させようかということが多いだけで、適材適所の人事配置を実行するとは名ばかりで、各局に配分された人数合わせに過ぎない異動が例年のように行なわれていた。 増え続ける不法残留者や不法入国者の摘発の要請は高まるばかりであり、それに対して人手が足りないのは東京局も地方局も一緒であった。 人員がこれ以上増えないのであれば、一緒に仕事をする職員はそれぞれが高い能力を... ...続きを見る |
2007/09/06 07:02 |
三 人事異動(7)
「しょうがないだろう。人事異動というのは、必ずしも適材適所ってことにはならないのだから。 それに今になってそんなことを言っても、変更がある筈もないのだから、それこそどうしようもないだろう」 「でも、島田さんはないでしょう。まともに相手の眼を見て話をしませんよ、あの人は。 それに初めての東京局勤務で、あの人があんなであったとは、誰一人として知らなかったじゃないですか。 もっとも大村で一緒だった沼田課長は、知っていたらしいですがね」 庶務班長の板垣が、この四月に摘発第三班長として赴... ...続きを見る |
2007/09/04 07:33 |
三 人事異動(6)
「五月の月間の申し入れですか。いつも早い動き出しですね」 例年ゴールデンウィーク明けの五月に予定されている集中摘発月間の申し入れだと思った九鬼が、一ヶ月前からの早い申し入れに満足そうに応対していた。 「それもあるのですがね、九鬼ちゃん。ちょっとお知恵を拝借したいことがありましてね」 海老川班長がお知恵を拝借というときには、注意して掛からねばならないことの方が多い。ちゃん付けで呼ぶようなときは尚更だ。 「なんですか。ちょっと怖いなあ」と言いながらも、九鬼は満更でもない笑顔を崩さなかった... ...続きを見る |
2007/09/02 05:27 |
三 人事異動(5)
入管法六十五条とは、入管法に違反している外国人が警察官等の司法機関に逮捕された場合、通常は検察官に送致した上で起訴や不起訴等の処分を経て、入国管理局に引き渡されることになるのだが、逮捕された外国人が入管法違反以外の犯罪の嫌疑がない場合に限り、逮捕して四十八時間以内に入国管理局に身柄を引き渡せることを規定しているものである。 これを入管法の直送規定と呼び、埼玉県警は早い段階からこの規定を利用しての合同摘発を実施していた。 ...続きを見る |
2007/08/31 06:24 |
三 人事異動(4)
埼玉県は県内をJR宇都宮線、高崎線、上越新幹線や東北新幹線などの、東北や上信越への交通機関が大動脈の様に通っており、関越自動車道や東北自動車道などの高速道路網が整備されたことにより、それまで東京都の傍にありながら田舎じみていたのが、一気に首都圏の要衝の地位を占めるようになっていた。 事件発生件数あたりの警察官の数が、日本一少ない埼玉県警は刑事事件発生件数を加速させる恐れのある外国人法違反者の増加に、早い段階から危機意識を持っていた。 近接する東京都から流入する外国人法違反者の増加に、敏... ...続きを見る |
2007/08/29 07:50 |
三 人事異動(3)
「九鬼班長、いつもの埼玉県警の方がいらっしゃいました」 警備第二課庶務班の新採用といっても、採用されてからもう一年になる溝口警守が、二人の男を引き連れて髭面の九鬼の元にやってきた。 「溝ちゃん、いつものはないだろう」 そう言いながら笑顔で九鬼の前にやってきたのは、埼玉県警外事課の海老川班長と渡辺班長だった。 九鬼たちの所属する警備第二課と合同摘発を実施した回数は、警視庁をはじめとする東京入国管理局が管轄する警察本部の中では、埼玉県警が断トツで他の追随を許さぬ数を誇っていた。 ...続きを見る |
2007/08/27 06:50 |
三 人事異動(2)
四階の西側にある次長室の前には、これから挨拶する順番を待つ入国警備官たちの行列ができていた。 「気をつけ。敬礼。入国警備官、警備士、大渕雅夫以下五名は、平成九年四月一日付けをもって、名古屋入国管理局から東京入国管理局への転任を命じられ、本日着任いたしました。以上申告します」 名古屋入管から転勤して来た五人の申告が終わると、総務事務室長に案内されて、次の入国警備官のグループが次長室に入って行った。 地下にある警備第二課、警備第三課から一階の警備第四課、二階三階にわたる警備第五課、六階に... ...続きを見る |
2007/08/25 08:13 |
三 人事異動(1)
東京入国管理局第二庁舎、西が丘の通称二庁の前庭は、散り始めた桜の花びらが、絨緞のようにアスファルトを飾っていた。 午前九時の開庁に合わせて、職員たちが二人、三人と登庁してきた。 四月、学校は新学期を迎え、真新しいランドセルを背負う小学生や少し大きめの制服姿が初々しい中学生などの姿が、町のそこかしこにあふれている。 入国管理局もこの時期には、新規採用者や転勤して来た職員が、多い時には半数近くも入れ替わるのだった。 新規採用の者も転勤して来た者も、次長室から警備監理官室、そして所属... ...続きを見る |
2007/08/23 06:36 |
二 それぞれの夢(9)
入管の申請手続きに携わっていた富樫も、入国警備官に摘発された者の手続に携わるのは初めてだった。 摘発されたが帰宅することを許された中国人留学生から、入国警備官による違反事件の取調べ状況を聞いて、ただ漫然と相手の出方を待っているだけではなく、自分たちに有利な状況を文書にして取調べに臨むことにした。 笑顔で入管の門を飛び出してきたホアホアの姿が、富樫の目に今も焼きついている。 あのときから中国人の間で、富樫の名は一躍有名となり、ホアホアも絶体絶命の窮地から生還したとして、中国人社会の中... ...続きを見る |
2007/08/21 06:34 |
二 それぞれの夢(8)
昼間学校に行く関係から長時間の夜間作業に従事するようになったホアホアは、突然やってきた早朝の入管の摘発を、近場にあったプラスチップの山にもぐりこんで、辛くも逃れたのだった。 留学生のアルバイトは認められているにしても、ホアホアの就業時間は留学生に許された時間の倍近くになっていた。 あのまま捕まってしまったら、資格外活動容疑で強制送還されるところだった。 アルバイトに精を出しすぎて、ときどき学校に行くのを止めてしまったりしていたことも、プラスチックチップの山にもぐりこませた大きな理由... ...続きを見る |
2007/08/19 07:54 |
二 それぞれの夢(7)
富樫は目を細めてメイランの後ろ姿を見送ると、机の上のスケジュール帳に印を打った。 浦和に事務所を置くようになって、もう十年以上が過ぎていた。最初の頃は仕事がなくて、事務所の経費を捻出するだけで精一杯の状況だった。支払いが滞り、事務所に戻れなくなったことも、今では笑い話にできるようになった。 あの日、ホアホアと出会ったことが今の隆盛を築くきっかけになるとは、あのみすぼらしくおどおどとした中国人の青年を初めて見た時には、思ってもみないことだった。 プラスチックチップに紛れて、入管の摘発... ...続きを見る |
2007/08/17 06:53 |
二 それぞれの夢(6)
その時々で見る夢は違っている。 規則正しい電車の揺れが、ホアホアの中枢神経を程好く刺激し、いつしかホアホアは眠りについている。 ホアホアと呼ばれている男は、正式には陳華平といい、中国福建省の出身だった。 日本語学校の学生として来日して以来、もう十年になろうとしていた。 すっかり日本語も覚えて、かなり裕福な暮らしをしているように見えるホアホアだが、これまでの生活は決して傍で見ていて楽なものではなかった。 それは電車の中で子供のように眠っているホアホアが、時折何かに脅えて目を覚... ...続きを見る |
2007/08/15 07:00 |
二 それぞれの夢(5)
新宿から埼京線に乗った男は、赤羽で乗り換えるかそのまま大宮まで行くか、まだ迷っていた。 ホアホアと呼ばれていた男は、携帯電話で連絡をとろうとして、苦笑いしながらそれを諦めた。 「あいつの携帯は今、他の男が持っているんだよな。まずい、まずい」 そう呟いて男は深くシートに座り直すと、このまま大宮まで行くことに決めた。 電車の振動は何故こうまで、人の神経を弛緩させるのだろう。 ホアホアは決して緊張感のない生活をしているわけではない。どちらかと言えば常に、細心の注意を周囲に払わなけれ... ...続きを見る |
2007/08/13 06:42 |
ニ それぞれの夢(4)
「週末には彼に会えるからね。今の内にやらなきゃならないことは、やっておかなきゃ」 そう言って女は、次から次へと帳簿の整理を始める。 女の亭主は組合の寄り合いとか言って、いま頃は大宮の繁華街で仲間と酒を飲んでいるに違いなかった。 女は結婚して直ぐに分かっていた筈だった。 夫は安い事務員を雇ったつもりでいるだけで、自分に対する愛情など持ってはいなかったのだ。 あのとき別れてしまえば良かったと、今でも女は思っていた。いずれは社長婦人だという思いが、女に離婚を思い留まらせた。 そ... ...続きを見る |
2007/08/11 08:18 |
ニ それぞれの夢(3)
美女木印刷は国道十七号線バイパスから、その敷地内すべてを見ることができた。 工場の大きさに比べて駐車場が広く感じるのは、印刷を終えた大量の印刷物を大型車両で運び出さなければならないからだ。 小さな印刷工場だった。 家内制手工業とでもいうのだろうか。社長と専務、常務などと役職者がいるが、それらはすべて家族や親族によって占められていた。 工場の隅の事務室で中年を迎えた女が一人、伝票の山を抱えて悪戦苦闘している。 「何で私だけが、こんなことしてなくちゃならないの。経費節減と言っても... ...続きを見る |
2007/08/09 06:43 |
ニ それぞれの夢(2)
大麻やMDMA錠(固形麻薬)、覚せい剤などに酔った中国人男女が、頭を揺らしながら踊ったり性交をしたりすることから、彼ら中国人の間で、文字どおり揺頭(ヤオトゥ)パーティーと呼ばれていた。 煙ったような大部屋を避けて、二人の中国人の男がテラスに出ていた。 太った中国人の男が、タバコを燻らしている細身の男に話しかけた。 「ホアホア、今日もいっぱい入ったな」 「その呼び方は止せ。俺の名は山田和夫だ」 細身の男は、胸ポケットから紺色の表紙の旅券を取り出すと、太った男の顔の前にひらひらと見... ...続きを見る |
2007/08/07 06:42 |
ニ それぞれの夢(1)
東京都新宿区、夜の歌舞伎町や大久保通りは韓国語や中国語がそこら中を飛び交い、しかも道行く者たちの国籍も多種多様で、夜の八時を過ぎた頃にはそこは日本ではなくなっていた。 大久保通りを少し入ったところに、そのマンションはあった。 通りで車を降りた男女が、三々五々腕を組みながらマンションの一室に入って行った。 部屋の中は真っ暗で、天井に場違いなミラーボールが回っているのが、唯一の照明となっていた。 通常のマンションを改造して、襖や障子を取り外した室内の中に、殆んど全裸の男や女が床の上... ...続きを見る |
2007/08/05 06:29 |
一 蛍の導き(10)
片岡は真赤な顔をして、それでも何とか自分の名前を陳に伝えることができた。片岡の顔がそのとき赤かったのは、もうすっかり醒めた酔いのせいではない。 「ここは寒いですし、どこかでお茶でも如何かしら。御礼もしなくちゃなりませんものね。お時間は大丈夫ですか」 「も、も、もちろん」 陳の申し入れを拒否する理由など、片岡が持っている筈もなかった。 片岡は外国人登録係としてさまざまな国籍の外国人と日々接しており、他の日本人に比べて外国人を見る目には自信があった。 外国人の中には得体の知れない怪... ...続きを見る |
2007/08/03 06:41 |
一 蛍の導き(9)
果てしなく続く片岡の空想を突然さえぎったのは、あの聞き覚えのある声だった。 そのとき片岡の想像世界では、片岡とその声の主との結婚式が始まっていた。 「あなたですか。携帯電話を拾ってくださったのは」 片岡の想像していた以上の女が、そこに立っていた。だが隣に立っているもう一人の女の存在が、片岡を戸惑わせるのだった。 二人並んだ女のどちらがこの電話の持ち主なのだろう、そして片岡は携帯電話をどの女に返せば良いのだろうと思った。 二人の顔を交互に見つめて戸惑う片岡の様子に、声を掛けてき... ...続きを見る |
2007/08/01 19:01 |
一 蛍の導き(8)
富樫は途中の電話室の前で立ち止まると、じっと中で行なわれている会話に耳を澄ませた。 「どこに落ちていました? 今あなたが持っている電話は、私のなんです。どこで落としたのかわからなくて困っていたんですよ。 拾ってくださったんですよね。どこに落ちていました。 ああ、そうでしたか。これからそちらに取りに行きたいのですが、あなたは大丈夫ですか。そちらで待っていていただけますか」 女はそういって受話器を置くと、富樫の方を見て親指を立てて見せた。それを見た富樫も満足そうに肯くのだった。 ... ...続きを見る |
2007/07/31 06:57 |
一 蛍の導き(7)
JR北浦和駅前のビルの一室では、十人ほどの女たちが個室に籠もって電話をしていた。 どこに掛けているのか、なかなか電話は繋がらない様子で、しばらく呼び出し音をじっと聞いては、溜め息をつきながら電話を切って、そして時間を置いては掛け直すという繰り返しだった。 一見するとテレフォンクラブのような状態だが、そこにいるのは若い女ばかりで、男は奥の方でふんぞり返っているのが一人いるだけだ。 女と知り合いたい男たちが、女から掛かってくる電話を待っているわけではないので、テレフォンクラブというので... ...続きを見る |
2007/07/29 07:11 |
一 蛍の導き(6)
「私の電話、拾ってくださったんですよね。どこに落ちていました」 どことなくイントネーション(語調)が日本人とは違う感じがしたが、市役所で外国人登録係をしている片岡には、それほど違和感なく受け入れることができた。 そんなことよりも電話の声の主がどんな女性なのかと想像して、知らず片岡の頬が緩みがちになっていた。 さっきまで一緒に呑んでいた女たちに勝るとも劣らないほどに、電話の声の女性は心地よい響きを片岡の耳に届けていた。 「これからそちらに取りに行きたいのですが、あなたは大丈夫ですか。... ...続きを見る |
2007/07/27 07:02 |
一 蛍の導き(5)
涙でくしゃくしゃになった片岡の視線が、まるで蛍のように点滅する光を捉えた。 「蛍?」 小さな昆虫の発する光に救われた思いを抱いた片岡は、ゆっくりと立ち上がると点滅する光に近づいて行った。 近づくに連れてその点滅する光が、微かな音を発しているのに気付いた。 叢に隠れて片岡を待っていたのは、微かな音を発して切なく震えて光る携帯電話だった。 「もし、もし」 手にした携帯電話を大事そうに包み込んで片岡は、誰のものともわからぬ携帯電話で、どこの誰とも知らぬ相手と話そうとしていた。 「... ...続きを見る |
2007/07/25 07:44 |
一 蛍の導き(4)
「私の電話、拾ってくださったんですよね。どこに落ちていました」 どことなくイントネーション(語調)が日本人とは違う感じがしたが、市役所で外国人登録係をしている片岡には、それほど違和感なく受け入れることができた。 そんなことよりも電話の声の主がどんな女性なのかと想像して、知らず片岡の頬が緩みがちになっていた。 さっきまで一緒に呑んでいた女たちに勝るとも劣らないほどに、電話の声の女性は心地よい響きを片岡の耳に届けていた。 「これからそちらに取りに行きたいのですが、あなたは大丈夫ですか。... ...続きを見る |
2007/07/23 07:12 |
一 蛍の導き(3)
涙でくしゃくしゃになった片岡の視線が、まるで蛍のように点滅する光を捉えた。 「蛍?」 小さな昆虫の発する光に救われた思いを抱いた片岡は、ゆっくりと立ち上がると点滅する光に近づいて行った。 近づくに連れてその点滅する光が、微かな音を発しているのに気付いた。 叢に隠れて片岡を待っていたのは、微かな音を発して切なく震えて光る携帯電話だった。 「もし、もし」 手にした携帯電話を大事そうに包み込んで片岡は、誰のものともわからぬ携帯電話で、どこの誰とも知らぬ相手と話そうとしていた。 ... ...続きを見る |
2007/07/22 07:36 |
一 蛍の導き(2)
今日は珍しく役所の後輩の誘いで合コンに参加したものの、体よくスポンサーにされ一人取り残されてしまったのだ。 後輩たちは三々五々、二次会と称し二人連れでいなくなった。会計を済ませた片岡が外に出たときには、もうそこには知っている顔はどこにもなかった。 片岡はこみ上げて来る嘔吐感に、思わずベンチを立ち上がり、草叢を探して吐こうとした。 飲み食いしたもの以上に吐き出した気分だった。 片岡は涙目になりながら、更に口の中に指を突っ込むと、胃袋まで吐き出そうという勢いで吐こうとした。 そ... ...続きを見る |
2007/07/20 07:56 |
不法就労者(仮題) 第一部 偽装結婚 一 蛍の導き(1)
開襟の半袖ワイシャツが、肌にべったりと張り付くような暑い夏の夜。 その男は足元もおぼつかないくらいに酔っていた。 大宮の氷川神社の参道を、男は右に左によろけながら、とぼとぼと歩いていた。 参道沿いに設えてあるベンチに、男は座りこんだ。 「何がご馳走さまだ。ふざけやがって。もう二度とあいつの誘いには乗らんぞ。片岡さんにだって意地ってもんがあるんだ」 男は片岡という名で、大宮市役所の外国人登録係で働いていた。 地方の大学を卒業すると大宮市役所に職を得て、生まれ故郷である埼玉に... ...続きを見る |
2007/07/19 06:48 |
(続)何故、入国警備官は証人として呼ばれたのか、東京地裁へ行ってみませんか
5月16日、東京地裁712号法廷、原告側、被告(国)側の書面による意見が出尽くしたことを確認して、裁判は結審した。原告側はあと二人の証人尋問を要請していたようだが、それは却下され結審を迎えていた。 例え違反調査が不十分なものであろうとも、その後の違反審査、口頭審理などで、原告側の言い分は聞いている筈だから、退去強制令書の発付に誤りは無いと言う判決になるのだろう。 さて、注目の判決公判は、(注目しているのは俺だけか) 平成19年6月29日(金) 東京地裁 708号法廷 で 午後1... ...続きを見る |
2007/06/14 07:34 |
何故、入国警備官は証人として呼ばれたのか?東京地裁に行きませんか
先月、東京地裁第703号法廷で、中国人男性の退去強制令書発付処分取り消し訴訟の公判が開かれた。 日本人配偶者の資格を有していた中国人男性は、在留期間の更新をすることなく不法残留し、警察に捕まることとなった。入管法第64条(公判請求しないことによる入管渡し)により、入国管理局に引き渡された。 在留を希望しなかったがために、退去強制令書が発付されたが、その後、日本にいる中国人女性との間に、子供がいることをもって、在留希望をした。 当日、傍聴したのだが、俺が何故この裁判を傍聴しに行ったの... ...続きを見る |
2007/04/25 15:28 |
摘発収容された者に「在留特別許可」がおりる
ホステスとして働いていた店に、入管と警察の合同摘発が入った。店の中にいたのは、「興行」「日本人の配偶者」「特定活動」の資格を持つ者の他に、若干の「不法残留者」がいた。 今回相談を受けたのは、「特定活動」の資格を持って在留していた女性だった。 「興行」の資格から、ある事情を申し立て「特定活動」に変更されて在留していたものだが、もともとその店で働いていたことから、時々店に顔を出しており、運悪く(悪行の報いか)摘発されたのである。 その女性には、以前から交際していた日本人男性がおり、その... ...続きを見る |
2007/03/07 08:36 |
行政書士登録しました。本日より個別案件にも独自にお答えいたします。
予てから一部の方にご心配をお掛けしていた行政書士登録が、本日、3月1日付けで、登録となりました。 これまで私を支えてくださっている法曹関係者の方々との契約は、そのまま継続してゆこうと思っていますので、ご安心を。 このブログやホームページをご覧になっている方で、渉外法務関係の手続きでお困りの方がいらっしゃれば、直接、お答えすることができますので、お寄せください。 もちろん、裁判ということになれば、弁護士(それも習熟した信頼の置ける)をご紹介いたしますし、会社の設立から、社会保険関係の... ...続きを見る |
2007/03/01 08:43 |
イラン人一家の退去強制手続きについて考える
約16年前に来日して不法残留状態となり、強制退去処分の取り消し訴訟で敗訴が確定したイラン人アミネ・カリルさん(43)一家4人(群馬県在住)について、昨年11月、このイラン人一家の仮放免許可が延長された。アミネさん夫婦と長女マリアムさん(18)は1990−91年に来日。96年に2女シャザデさん(10)が生まれた。99年に一家4人の在留特別許可を求めて東京入管に出頭したが認められず、強制退去処分を受けた。 2000年に処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴。03年の1審判決では勝訴したが、2審東... ...続きを見る |
2007/02/13 16:58 |
ストライクとボール(判断基準について考える)
土曜日、日曜日の二日間、グランドに出た。計三試合。すべて球審をやった。 その中で、ある審判から注意というか、助言を受けた。 「ボールをストライクとするのは許せても、ストライクをボールとするのは審判として許されるものではない」 「同じようなところに来ていて、ボールであったり、ストライクであったり、ばらついていてはいけない」 要はその日の俺の投球判定に、ばらつきがあるというのだ。仰るとおり、その日の俺には少しの逡巡があった。それが投球判定のばらつきとなったのかもしれない。 だが何度... ...続きを見る |
2006/10/03 16:09 |
水曜日の午後の在留特別許可
とうとう出ました。在留特別許可。収容期間が三日後の土曜日までとなるこのぎりぎりのときに、在留特別許可が出た。 その電話を受けた俺も、間違いなく許可されるだろうと思ってはいても、やはり、ほっとした。 それにしても収容期間を、57日間も費やしての許可となるとは思わなかった。クライアントも言っていたが、「税金の無駄遣い」その一言に尽きる。 だが、収容されてから婚姻手続きを始めたことを考えれば、こうなるのもしょうがないかとも思えた。 とにかく、許可されました。 ...続きを見る |
2006/08/16 17:15 |
その申請(その事案)許可になる可能性は何パーセント?
その人は、席に座るや否や滔々とまくし立てた挙句に、「で先生、許可になる可能性は何パーセントくらいですかね」と聞いてきた。 先生曰く、「五分五分かな」「えっ、そんな博打じゃないんですから、先生」 相変わらずの光景だ。申請しようとする外国人は、探りを入れてきているのだ。先生は、何とか仕事を取ろうとするのだが、成功確率が何パーセントであるかを明言できないでいた。 そのやり取りを電話で聞きながら、そっと俺は先生に助言する。 そもそも申請や出頭申告で、100パーセントの確率で成功すると、... ...続きを見る |
2006/08/15 17:34 |
後追い婚の在留特別許可の話
六月中旬のことだ。一人の不法残留者が警察に捕まった。彼には日本人の恋人がいた。 だが彼が捕まったときには、未だ結婚の約束も婚姻届の準備もしていなかった。 俺はまず最初に、二人がどうするつもりなのか、そして周りにいる人間がどういう意向を持っているのかを、確認するのが先決だと考えた。 彼らの決断が早かったのが功を奏し、婚姻に必要な文書が逮捕後一週間で準備された。逮捕されたことが、結果的に婚姻手続きをとる余裕を与えてくれた。 問題は直ちに受理されなかったことだが、それも粘り強い交渉の... ...続きを見る |
2006/08/11 15:59 |
外国人性犯罪者の矯正は可能か(幼女暴行殺人を犯したペルー人被告に無期懲役判決について考える)
昨日、広島地裁において、幼女暴行殺人に問われたペルー人に対し、判決が下された。 ...続きを見る |
2006/07/05 10:43 |
銃器社会の到来が云われて久しいが、いまだにこんな状況だとは驚いたものだ
「発砲拳銃に殺傷能力 静岡の強盗でも使用 女子大生誘拐」 東京都渋谷区の女子大生誘拐事件で、監禁の疑いで逮捕された伊藤金男容疑者(49)が捜査員に発砲しけがを負わせた銃器は、殺傷能力のある改造拳銃とみられることがわかった。警視庁は、銃の入手経路について調べるとともに、捜査員に対する殺人未遂の疑いや銃刀法違反容疑でも立件する方針。伊藤容疑者らが関与したとされる静岡県の強盗事件でも拳銃が使われていた。 調べでは、警視庁の捜査員が果菜子さん救出のため、川崎市中原区のマンションの部屋に突入した... ...続きを見る |
2006/06/29 10:11 |
愛人に生ませた子供を、日本人にしたいからと言って
愛人に生ませた子供を日本人にしようと、裁判を起こしているケースに、高裁の判断が下った。上告すると言っているが、最高裁でも認められることは無いだろうと思う。新聞によると 『内縁関係にあるフィリピン人女性と日本人男性との間に生まれ、「両親が法律上結婚していない」との理由で国籍取得を法務局に拒まれた男児(8)が、日本国籍の確認を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。浜野惺(しずか)裁判長は国籍を認めた一審・東京地裁判決を覆し、請求を棄却する男児側逆転敗訴の判決を言い渡した。男児側は上告... ...続きを見る |
2006/03/01 17:06 |
埼玉県警川口警察署が日本人女性を、旅券不携帯で誤認逮捕について考える
朝日新聞によると誤認逮捕は、二月二十五日の夜に起こったらしい。 『埼玉県警川口署は27日、川口市の無職女性(28)を出入国管理法違反(旅券不携帯)の疑いで逮捕後、女性が日本人であることが判明して釈放した、と発表した。女性は外見から東南アジア系と疑われて徹夜で事情を聴かれた後に逮捕された。解放されたのは職務質問から約24時間後だった。 同署によると、25日午後7時40分ごろ、市内の交番の警察官が徒歩でパトロール中、路上を歩いていた女性が視線をそらし、警察官を避けるようなそぶりをしたため、職務質... ...続きを見る |
2006/02/28 10:26 |
落ち込んだ行政書士の話
電話をしてみた。連日のように電話して来ていた行政書士が、しばらく連絡を寄こさなくなったからだ。 仕事はたくさん入ってくるらしく、それが連日のように電話をしてきた理由だ。電話が来ているときは、多少煩かったのだが、それが突然来なくなると妙に気になるのは、俺のお節介なところかもしれない。 電話に出たその先生は、掛かってくる相談の電話に、殆んど出ることも無く、出ても直ぐに切ってしまうようになっていた。やる気もあり、その能力も十分に兼ね備えていた男だった。その男をこうまで変えてしまったのは、ある... ...続きを見る |
2006/02/24 16:33 |
日本人配偶者の殺人
滋賀県下で、「日本人配偶者」の資格を有する中国人女性が、娘と同級の幼稚園児二名を、幼稚園に送る途中で、刺殺するという事件が起きた。 事件そのものは、容疑者である中国人女性も、二人の幼稚園児を自宅から持ち出した包丁で刺殺したことを認めており、三月の初めには起訴されて裁判を待つことになるのだろうが、事件発生から今日までのマスコミの報道から、一つだけ抜けていることについてお話したいと思う。 それはこの中国人女性が、日本の結婚相談所(国際結婚を斡旋する)を介して、日本人男性と知り合い、結婚した... ...続きを見る |
2006/02/20 16:39 |
偽造旅券の話4 口頭審理状況その2
口頭審理時において、上陸を許可するに足らない理由が、その所持する旅券が偽造乃至は変造の疑いがあるとき、口頭審理の結果によっては、退去命令ではなく、退去強制を受けることがあり得るのだ。 いまは新東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港の三箇所に、偽変造文書鑑識センターが設置され、入国してくる外国人の所持する旅券等の文書の真贋を、短時間で判定することができる。 だが、いまから二十年も前の成田空港では、怪しい旅券であっても、余程の決め手がなければ、偽造であると断定はできなかった。 余程の... ...続きを見る |
2006/02/15 15:28 |
偽造旅券の話3 上陸審査における口頭審理
上陸審査ブースで旅券を提示して、査証に合わせた上陸許可証印を受けられなかった外国人は、ブースの入国審査官の呼び出しブザーでやってくる特別審理官に引き渡される。 上陸が許可されなかった理由が、入管法第五条(上陸拒否事由)に該当する者であった場合や特別な手配や、要注意国の者であった場合などは、口頭審理に回された時には、殆んどアウトだといえる。 口頭審理は事務机を挟んで、申請者と特別審理官の二人が密室に置いて、対峙することで始まる。 その段階では殆んどの申請者が、上陸を許可されず口頭審理... ...続きを見る |
2006/02/08 15:33 |
重国籍者の話
日本の国籍以外に他の国の国籍を持っている、いわゆる重国籍者の話だ。 ある行政書士に、「日本国籍以外に外国籍を有している者です。日本にその外国の旅券を使って入国したのですが、外国人登録をしなければなりませんか」という相談があった。 その行政書士は、しなければならないと答えたが、ことはそう単純ではない。 基本的に日本国籍を有しているのであれば、外国人登録をする必要はない。ただし、どうしても外国人として日本に滞在したいというものであれば格別、そうでなければ日本国籍を証明する文書(戸籍謄本... ...続きを見る |
2006/02/06 13:42 |
偽造旅券の話 2 上陸審査状況
入国審査官は限られた時間の中で、その旅券が真正なもので、写真もその指し出した当人と同一であることを確認し、ブラックリストにも登載されていないことも確認する。 入国審査ブースに配置された入国審査官ができるのは、上陸を許可するか、ブースに設置された呼び出しブザーで、特別審理官と呼ばれる上位の入国審査官を呼ぶこと、このどちらかしかできない。 ******** 垣田審査官は、入国警備官から転官して4年になる。入国警備官の仕事は好きだったが、田中は増え続ける不法残留者を摘発するだけでは、減少... ...続きを見る |
2006/02/03 15:20 |
偽造旅券の話
人がその所属する国から他の国へ旅行するとき、その人の国籍、氏名、年令等の身分事項を証明するとともに、その人が安全に旅行できるように要請する文書が記載されているのが、いわゆる旅券である。 旅券を入手できなかったり、旅券申請それ自体を知らず、渡航手続き一切をブローカー頼みにした時に、多くは偽変造の旅券が利用されることになる。 旅券の偽造と言っても、冊子を丸ごと偽造するものもあれば、中のページを差し替えたり、写真を貼り替えたりするなど、その仕様は多岐にわたっている。 二十年前に流行ってい... ...続きを見る |
2006/02/01 11:29 |
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