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退去強制制度と死刑制度(2)
刑法上の刑罰である禁固刑や懲役刑、そして死刑に対して、入管法上の刑罰とも言える退去強制制度に、出国勧奨、出国勧告、出国命令、強制送還と4種類あるが、これらは全てある年月が来れば再来日する可能性があり、言わば有期刑に当たるものであると考えられる。
問題は、一部の長期拒否者(いわゆる永久拒否者)をどう扱うかと言うことだ。
薬物違反者や売春関係に従事していた者など、入管法第五条に列記される期限の無い上陸拒否者だ。
外国人であるから、もう二度と日本の地は踏まないという者にとっては、強制送還...
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2008/07/09 14:13 |
退去強制制度と死刑制度(1)
過日、法務大臣の執行命令に基づいて、死刑が執行されたが、若干の違和感を覚えたのは、俺だけだろうか。俺は、現行法で定まっている限りは、死刑の執行について、異議を申し出る者ではない。
それどころか逆に、無期懲役とされながら、15年もしたら出所してきたり、有期刑の刑期の半分ほどで仮釈放されたりすることの方に、釈然としないものを感じており、無期ではなく終身刑とすることや、有期刑でも、懲役120年とかの、犯した罪に合わせて、累積して行く方が良いと考える者だ。
死刑というのは、社会を構成している人...
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2008/07/01 09:22 |
キレると切れるの違いは大きい
「あいつは切れる男だ」
そう言われて悪い気がする者はいないに違いない。
だが、「あいつはすぐキレる男だ」
そう言われたら、話は別になる。
ある統括が、部下から「こんな仕事はやっていられない。このまま続けさせるのなら、辞めます」と言われた。
辞めるという者をどうすることも出来ないと考えた統括は、部下がやっていた仕事をどうするか、それを考えなくてはならなくなった。
切れる男であれば、数多いる部下の特性を踏まえて、「この仕事をやってもらえないか。数こそ多くは無い...
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2008/06/11 14:22 |
イラン人による薬物事犯の話(カラムの思いは伝わらない)
<覚せい剤密売>イラン人逮捕 東京の住宅街で主婦相手に [ 05月22日 02時30分 ]
東京都杉並区の住宅街で主婦らに密売する目的で覚せい剤や大麻を所持していたとして、関東信越厚生局麻薬取締部が4月、イラン国籍の杉並区阿佐谷北4、無職、ファリド・ヤズダニ容疑者(38)を覚せい剤取締法違反(営利目的所持)などの疑いで現行犯逮捕していたことが分かった。都内では1月にも世田谷区で主婦らに密売していたイラン人が逮捕されており、捜査当局の監視の目の緩い住宅地で薬物汚染が広がっている実態が改...
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2008/05/22 15:01 |
桜の散る頃までには、何らかの
結論や結果が出るのではないかという予想は、悉く裏切られた。
桜はすっかり散り落ちてしまった。そんな今日だ。もう少しかかるんじゃないかと思っていた資格変更申請の通知葉書きが来た。
内容を確認してみたが、予定していたとおりの許可内容だと思われる。いや、予定していた以上の結果ともいえるかもしれない。
三月末の申請だったから、四月も半ばまで過ぎないと駄目かなと思っていた。いや、けっこうやるもんですな。
この調子で、結論・結果を待っている案件が、思い通りの結末を持って、次々と解決して行くと...
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2008/04/11 13:15 |
仮放免が許可されました(永住者の退去強制について)
退去強制令書発付処分の取り消しを求めて訴訟中の事件で、牛久に収容されていた原告の女性の仮放免が、2月7日に許可された。
俺の知る限りでは、三度目の申請だったはずだ。三回目の申請と言うのは、仮放免許可申請に限らず、その他の許可申請についても、色々言われて不許可や不交付であったものが、許可されるタイミングでもある。
仮放免を許可されると言うのは、行政訴訟の行く末(判決の内容)にも影響を与えるものだし、少なくとも入管側が収容を継続する意味を持たなくなったと言うことを表明しているものだと受け取...
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2008/02/09 13:28 |
続 東京地裁へいらっしゃいませんかの続報
過日行われた公判でのこと。本人尋問と夫の証人尋問をやることになった。しかも4月以降にずれ込むことに。本人尋問はこちらが希望してのもの。裁判官自らが、原告のタイ人女性を見ることは、これは第一審でも勝訴判決が出るかもしれないなと、そう思っている。
事実認定にかなり危ういものがあるので、いずれかの場面で、和解案を裁判所が提示するか、入管側が折れてくるかと思っていたが、もうすっかり弁護士は、判決をもらうつもりになっている。(もちろん原告勝訴の判決だ)
今後も公判の予定は、随時お知らせしますので...
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2008/02/01 11:30 |
続 東京地裁へいらっしゃいませんか(「永住者の退去強制」)
以前、お話した「永住者」で日本人の子供がいる女性の退去強制令書取り消し訴訟の第二回公判が、
1月23日(水) 13時30分から 東京地裁712号法廷
で行われます。
俺の感触では、もう一・二回で終わるような気もするが、そうなると控訴を考えなければならなくなるのかな、そう思っています。
できれば、陳述書ではなくて、本人尋問を行ってもらいたいのだが・・・
お時間がある方は、是非、いらしてみて下さい。もし、俺に気付かれましたら、気軽に声を掛けてください。
行政訴訟がど...
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2008/01/16 08:47 |
マル特と出国命令制度の空白
出頭申告した不法残留者について、収容手続きを執らないで、出国させるマル特手続きとそれとほぼ同じ意味合いを持つ出国命令制度の間に、空白の期間があることはご存知だろうか。
俺は不勉強で、先日、初めてそれを知った。
退去強制された者の上陸拒否期間は、長期、短期と言って、ずっと昔には、永久拒否とされるものと、一年拒否とされる者との二種類であったのが、200年(平成12年)2月18日、一般の退去強制者の上陸拒否期間が五年に伸長なったときから、いわゆるマル特手続きを執った者についても五年拒否とされ...
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2007/12/25 10:10 |
東京地裁にいらっしゃいませんか(「永住者」に対する退去強制令書発付取り消し訴訟)
日本籍の子供を有し、「永住者」として在留していた者が、刑罰法令に違反し、退去強制令書が発付された。
刑事裁判が終わり、身柄が入管に引き渡された後も、関係者の誰もが違反調査、違反審査、口頭審理、そして異議の申し出による法務大臣の裁決によって、在留特別許可されると思っていた。
当初は、口頭審理の段階で弁護士をつけることにしていたのだが、ことを安易に考えたのか、直前になって、弁護士を解任してしまった。
裁決結果は予想に反して、強制退去という結論だった。
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2007/11/13 14:13 |
「在留特別許可」について考える
在留特別許可に関する法務大臣の裁量権について
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2007/11/09 13:04 |
むっくさんへのお返事
むっくさんは、今、警備官なのでしょうか。違うようですね。他の職業に就いていて、これから入国審査官になりたいということですよね。
入国審査官には、行政職俸給表、二級以上の俸給を受けている入国審査官と、法務事務官や入国警備官が、併任されて入国審査官として配属される二種類があります。
入国審査官になるのに、必ずしも入国警備官から転官しなければならないものではありません。
国家公務員U種採用試験を受けて、入国審査官になるのが通常の道だと思います。
どうしても入国警備官から転官するんだ...
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2007/06/25 23:31 |
行政書士登録しました。本日より個別案件にも独自にお答えいたします。
予てから一部の方にご心配をお掛けしていた行政書士登録が、本日、3月1日付けで、登録となりました。
これまで私を支えてくださっている法曹関係者の方々との契約は、そのまま継続してゆこうと思っていますので、ご安心を。
このブログやホームページをご覧になっている方で、渉外法務関係の手続きでお困りの方がいらっしゃれば、直接、お答えすることができますので、お寄せください。
もちろん、裁判ということになれば、弁護士(それも習熟した信頼の置ける)をご紹介いたしますし、会社の設立から、社会保険関係の...
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2007/03/01 08:43 |
イラン人一家の退去強制手続きについて考える
約16年前に来日して不法残留状態となり、強制退去処分の取り消し訴訟で敗訴が確定したイラン人アミネ・カリルさん(43)一家4人(群馬県在住)について、昨年11月、このイラン人一家の仮放免許可が延長された。アミネさん夫婦と長女マリアムさん(18)は1990−91年に来日。96年に2女シャザデさん(10)が生まれた。99年に一家4人の在留特別許可を求めて東京入管に出頭したが認められず、強制退去処分を受けた。
2000年に処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴。03年の1審判決では勝訴したが、2審東...
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2007/02/13 16:58 |
マニュアルの功罪(どこもかしこもマニュアルだらけについて考える)
在留特別許可を求めて出頭するときに、入管の窓口では申告書(陳述書)という書類を用意している。
もともと出頭申告した者から、事情聴取して、申告録取書を入国警備官が録っていたものを、前もって出頭者に書かせておくようにしたものだ。
見てみると、丸で囲めば良いようになっていたり、括弧内に文字を埋めれば良いようになっていたりして、よくできている。
ただ、肝心の一番聞きたい事柄については、詳しく書くようにとの記載がなされているだけで、どのように書けば良いのかの例示はない。
ここが本当は一番...
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2006/09/20 16:22 |
小説「敢えて火中の」は如何でしたか
八十一回に亘って連載した小説「敢えて火中の(九鬼の最後の事件)」が、昨日ついに終わりを迎えた。
今のところ、かつての仲間からの反応も無いし、抗議のメールや苦情も無いのは、書いたものが真実だからなのか、それとも読まれていないからなのか、分からないが、これはそのままにしておくので、いずれ何らかの反応があることを期待している。
最初に出版した「入国警備官物語」より先に「敢えて火中の」を書いており、実際はこれが処女作となるものなので、思い入れは深い。
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2006/08/10 08:31 |
敢えて火中の(第八十一回) 終章 再生のとき
時を重ねるほどに俺は、胸に秘めた怒りや、突き上げるように湧きだす力を、その身体全体に感じていた。
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2006/08/09 12:14 |
敢えて火中の(第八十回) 第十八章 訣別の譜
「私(わたくし)は、今回の事件により、入国警備官という、法執行機関に勤務する立場にあったにもかかわらず、法律を犯す行為をしてしまいました。
この点については申し開きのしようもなく、慙愧の念に耐えません。
これにより、国民の信頼を裏切り、入管全体の社会的信用に傷をつけてしまったこと、また、家族をはじめとする周囲の方たちに、多大な迷惑をかけてしまったことを、深くお詫び申し上げます。
本件行為の際、私には、後日発覚する危険があるかどうかを考える余裕はありませんでしたが、日々の多忙な業務の中...
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2006/08/08 08:47 |
敢えて火中の(第七十九回) 第十七章 敢えて火中の(2)
「それには当時の入管の体制、また昨年からの取り調べにおける入管の体制にも、大きな問題があったということですか」
「翌年の入国警備官の増員要求に向けて、ノルマとも言える過酷な摘発業務を課せられた中で起こった逃走事件であることを、少しも理解してはいないと思っている。
もちろん俺自身が関与していることは事実で、それについて言い逃れをするつもりは全くないから、取り調べに於いても積極的に事実を認め話してきた。
関係した誰もがみんな、俺や大林、そして畠山のように、最初から事実を認め、話してくれてい...
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2006/08/07 07:51 |
敢えて火中の(第七十八回) 第十七章 敢えて火中の(1)
「何があったのですか」
黙っている俺に、どうしたのかとでも言いたげに、重ねて村木が問いかけている。
「はい、二月十四日に内示情報を知った夜のことです。毎朝新聞の記者が、自宅まで俺を尋ねてきました」
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2006/08/06 20:03 |
敢えて火中の(第七十七回) 第十六章 明かされた真相(2)
俺は最近になって続けて連絡して来た、二人の人物の話を思い出していた。
一人は新宿で摘発に従事している入国警備官だ。
小柄な身体に十分なパワーと新たな技術にも精通した、年こそ若いが優秀な入国警備官だ。
俺がこのような境遇になった今でも、欠かさず連絡してくるのだから、信頼の置けることは言うまでもなかった。
「今度の局長なんですけどね。面白いことを言うんですよ。『稲山と九鬼の二人が悪者で一件落着、それで良いじゃないか。もう忘れよう』って、そんなことを言うんですよ。
俺は納得したくは...
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2006/08/05 17:45 |
敢えて火中の(第七十六回) 第十六章 明かされた真相(1)
続いて村木弁護士が、事件が発覚した後のことに付いて、質問を引き継いだ。
「平成十三年六月、その過去の逃走事件が発覚し、入管内部、法務省と調査が行なわれたわけですが、最初に発覚した事実を突き付けられたときのお気持ちを聞かせてください」
「関係書類を警察から取り寄せるように言われたのですが、その書類を手にして見たときも、これと言った感覚もありませんでした。
沼田さんの元に集まるように言われ、沼田さんから概要をお聞きしたときに、何故か本当のことなのだろうかと、不思議な話でも聞くような気持ちで...
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2006/08/04 08:22 |
敢えて火中の(第七十五回) 第十五章 暴かれる人間性(2)
入管はこの不服申し立ての審問に、本省の西検事を当ててきていた。
その上で沼田を証人として、呼んだということは本格的に攻勢を掛ける意思を示したのだった。
沼田はそれまでの態度を一変して、はきはきとした声で西の質問に答え、如何に入管の下した処分が理に叶っているかを述べていた。
しかし村木の質問に対しては、突如惚けた老人のようになり、のらりくらりとするところなど流石は古狸であると、俺は不覚にも感心してしまった。
俺からの証人要請を断わった挙げ句に、人事院での不服申し立てに対し、入管側...
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2006/08/03 09:25 |
敢えて火中の(第七十四回) 第十五章 暴かれる人間性(1)
その日、弁護士事務所には、沈鬱な空気が流れていた。
「九鬼さん.。必ず執行猶予は付くと思いますが、有罪判決は免れないと思われますので、人事院の不服申し立てを取り下げようかと思うのですが」
公用文書毀棄、虚偽有印公文書作成・同行使罪には、懲役刑しか定められておらず、有罪となれば国家公務員の忌避事由にかかり、自動的に失職となるのだった。
「俺としてはそのまま申し立てを継続して、今一度言いたいことを言わせて貰いたいという気持ちなんですが。
駄目でしょうか。
それに全てやり終えなければ...
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2006/08/02 07:29 |
敢えて火中の(第七十三回) 第十四章 悪夢の続き(3)
最後に稲山の弁護士が、甲高い声で俺に質問した。
法廷内で声を心地よく響かせるには、声の質とともに音の大きさや、発音にも気をつけるのだと、以前に検察官から聞いたことがあった。
稲山の雇った弁護士ということもあり、俺にとってその甲高い声は『罪を被りたい』などとほざいた男を思い出させて、鳥肌が立つ思いがした。
「課長に報告した後、どうしようかと考えたのですね」
「そうです」
「課長からは、具体的な指示はなかったのですか」
「何もありませんでした」
「指示はあったのでは、ありませんか...
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2006/08/01 07:46 |
敢えて火中の(第七十二回) 第十四章 悪夢の続き(2)
続いて玉田弁護士が俺に質問をする。
「九鬼さんは当日の摘発に於いて、主管班長であったということで、監督責任を問われていますが、島田さんが担当していた取り調べ中の中国人が逃げたことについてまでの、このように広い監督責任はあったとお考えですか」
「主管班長とは先ほど河合氏がお話したとおり、警察との連絡調整に当たるものであり、そのように広い監督責任があるとは考えていませんでした」
「では島田さんに対する監督責任は、誰が負うべきだと考えますか」
「警備第二課長である稲山さんであり、当日の指揮官...
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2006/07/31 07:26 |
敢えて火中の(第七十一回) 第十四章 悪夢の続き(1)
待合室の中には、妻と俺の他に、証人として証言してくれる河合や出向で香港に行っている植田、新宿で連日連夜の摘発業務の合間を縫って来てくれた古川など、多くの友人が俺の公判に駆けつけてくれていた。
俺はじっと俺の顔を見つめたまま、言葉の出ない植田の手をしっかりと握り締めると、彼らの目の前で無様な姿は見せられないと、再び心に誓うのだった。
七月十九日、午前十時、東京地方裁判所第五一五号法廷、第二回公判に於いて、我々側の情状証人として河合が証言をした。
河合ははっきりとした声で、当時の警備第...
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2006/07/30 05:28 |
敢えて火中の(第七十回) 第十三章 公判開廷(4)
浦和駅は大宮駅に比べて西口も東口も、県庁を懐に抱えているわりには、駅前の貧相な感じは否めなかった
駅前の喫茶店で、俺は林田と待ち合わせることにした。
約束の時間ちょうどに小柄な林田は、昨年の夏の摘発以来の懐かしい顔を俺に見せていた。
「ご無沙汰しています。と言っても裁判所でお会いしていますけどね。今はどうされているんですか」
林田は入管の担当から警視庁の担当に配置換えされていたが、初めて同行取材した愛知県での摘発のことが印象的で、いずれはまた入管の取材をしたいと思っていた。
...
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2006/07/29 06:19 |
敢えて火中の(第六十九回) 第十三章 公判開廷(3)
その日の朝、いつもは大人しい『ムサシ』が騒いでいるのに気づいて、俺は目を覚ますと階下に降りて行った。
新聞を取りに玄関を出た俺に、やたらに興奮した『ムサシ』が纏わり付いてくる。
新聞受けの中に茶色の封筒が入っていた。郵便物ではないその茶封筒は、昨日の夜にはなかったから、投函されたのは今朝だということになる。
それで『ムサシ』が騒いでいたのだ。茶封筒の表には俺の名前が書かれており、俺の住所も氏名も知っている相手が投函したものだ。
林田と書かれた差出人の名前に、心当たりはなかった。...
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2006/07/28 07:36 |
敢えて火中の(第六十八回) 第十三章 公判開廷(2)
六月二十日、午前十時、東京地方裁判所、第五一五号法廷は、裁判官の開廷の合図を待って、公判が開始された。
検察官の起訴状朗読、証拠の採用、起訴事実の認否と続き、その日は稲山の妻が、情状証人として証言して終わった。
検察官はやる気のなさそうな中年の女性だったが、その朗読する声は見た目を裏切るほどに張りがあった。
稲山としては、即決で終了したいとの意向だったが、供述の一部について我々の方が不同意とし、被告人に対する弁護人の質問に変えられたことから、一回では終わらなくなった。
勿論、俺...
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2006/07/27 07:11 |
敢えて火中の(第六十七回) 第十三章 公判開廷(1)
村木弁護士は、四月から何度となく打ち合わせをする中で、場合によっては分離公判となるかも知れないが、言いたい放題の裁判にさせないためにも、こちらとしては合同でやってもらいたいと申し入れていると言っていた。
無罪を争う公判ではないことから、こちらは俺が何の利益にもならないのに敢えて今回の犯罪に着手したこと、それがこれまでの俺の仕事振りから導き出せること、そして十分に反省していることを裁判官に訴えるというのが中心となった。
「九鬼さん、入廷の前は控え室で待っていることになりますが、控え室は稲山...
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2006/07/26 09:06 |
敢えて火中の(第六十六回) 第十二章 火中の栗(3)
どう考えても、あの当時責任を被らなければならないのは、俺ではなかった。
勿論、逃走した中国人を追跡したならば、摘発月間を予定どおりに消化することはできなかっただろうし、それは俺にとっても苦渋の選択であるのに変わりはない。
だがそれは、課長や課長補佐が考えればいいことだったのかも知れない。
しかし俺にとっては、そう考えることなどできなかった。
あのとき確かに俺は目の前に起きた逃走事故を、どうしたらよいのかを考えていた。
そして稲山も大戸も、右往左往するばかりで、何の指示も出せ...
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2006/07/25 01:10 |
敢えて火中の(第六十五回) 第十二章 火中の栗(2)
「稲山さんの供述調書は、三月十一日付が一番古い調書ですよね。
逮捕される前の調書が、俺のものはあるのに稲山さんのものは証拠として提出されていないのは、どう考えれば良いのでしょうか」
「昨年六月の調査の時点から、稲山さんの供述は一貫して知らない。逃走した身柄の捜索を指示したとなっていたのだと思います」
「逮捕されて初めて、容疑を認めたと考えてよろしいのでしょうか」
「そうでしょうね。それも九鬼さんに被せていますけれども、大戸さんもほぼ同時期に供述していますね。
検察官はずっと否認して...
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2006/07/23 06:56 |
敢えて火中の(第六十四回) 第十二章 火中の栗(1)
供述調書を読んでいて、何度読まなければよかったと思ったか知れなかった。
しかし法廷できちんとした裁判を受けるためには、必ず通らなければならない作業なのだと言われて、検察官から証拠として提出された全ての供述調書を読み終えた。
「島田さんと稲山さんの調書は酷いですね。稲山さんの調書については、一部不同意として、公判で私が厳しく質問することにしたいと思います。
今回の事件で逃走されたことについては、九鬼さんに責任があることではないし、九鬼さんの失態ということでも当然ないのですから、九鬼さん...
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2006/07/22 00:29 |
敢えて火中の(第六十三回) 第十一章 供述調書(4)
『逃走した事実については、私も承知しておりましたが、その後の措置については稲山さんと九鬼班長が相談して決めたようで、私には稲山さんから削除して無かったことにしたからとしか聞かされておらず、私としては課長が決めたことに異を唱えることはできなかったのです』
課長補佐だった大戸だ。
俺と一緒に周辺の捜索もし、課長に報告したときも一緒だった筈なのに、その供述がこれだった。
『ほり』で一緒に呑んだときに、大戸が俺に言っていた応分に取るべき責任の結果が、この供述だったのだ。
稲山はこの大戸の...
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2006/07/21 07:50 |
敢えて火中の(第六十二回) 第十一章 供述調書(3)
『入国管理局は違反事件を全て立件することになっており、今回の場合、被摘発者名簿を作成した段階で、立件したものと思われる。
一度立件したものを削除するということは通常しないし、間違って番号をとった場合でも欠番とするのが通常の取り扱いである』
何のための供述なのか、最初は読んでいても分からなかった。
本省にいる福島という男の供述調書だった。
福島はかつて東京局にいた頃の集中摘発月間で、集団居住するアパートを発見し、そこを独り占めにしようとした男だ。
優秀な入国警備官であることは確...
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2006/07/20 06:48 |
敢えて火中の(第六十一回) 第十一章 供述調書(2)
逃走事件の始まりである緩慢な違反調査をしていた島田は、自分のしたことについて、予想通りの他人事のような供述をしていた。
『身柄を監視しなければならないのは、取り調べに当たっている私一人に負わされているのではないし、帳場の人間も監視の責任があると思う。
逃げられたのは私の責任ばかりじゃないと思った。
九鬼班長が課長に報告しに行ったので、私は敢えてしなかった』
島田の顔を思い浮かべながら読んでいて、あのときもう少しきつい言葉のひとつも言っておけば良かった。
しょんぼりとして、為す...
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2006/07/19 10:10 |
敢えて火中の(第六十回) 第十一章 供述調書(1)
不服申し立てが受理されたのは、五月も半ばを過ぎてからだった。
「不服申し立ては正式に受理されました。門前払いということではないと理解して良いかと思います。
六月二十日に初回の公判が始まりますが、稲山さんは即決裁判を望んでいるようです。
初公判のその日に判決までと言っているようで、この様子では多分、稲山さんは九鬼さんに責任を被せてくるのだと思います。
それと沼田さんの証人としての出廷が駄目になったのは残念ですが、九鬼さんには他に誰か証人として出て貰える人はいますか。
現職の職員...
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2006/07/18 07:18 |
敢えて火中の(第五十九回) 第十章 村木法律事務所(3)
第二庁舎の三階の一番西側にある広い部屋に、沼田はソファに座って俺を待っていた。
「大変だったな」
沼田はそう言ったきり、言葉を飲み込んだ。
俺の目の前に置かれた茶碗は、来客用の茶托付きのものだった。
俺はもう入国警備官ではなく、お客さんなのだと改めてそう言われたような気がした。
「良い経験させて貰いました」
決して強がりではなく、俺の口は自然にそう言っていた。
「こんなことになる筈じゃなかったんだがな。取り調べに当たったのが、刑事部だったのが誤算だったな。
公安部の検...
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2006/07/17 06:43 |
敢えて火中の(第五十八回) 第十章 村木法律事務所(2)
これからの日程を打ち合わせたが、一回目の公判が六月二十日とかなり先であることから、まずは人事院に対する不服申し立てから着手することになった。
また公判の準備として、冨田検事の忠告どおりに沼田に弁護側の証人として出てもらえるよう依頼することも決定した。
明日にでも役所に行って、私物の整理と北川や花村たち後輩に挨拶をするつもりだった。
沼田は大阪の転勤がなくなり、東京局の次長に昇格していたので、そのついでと言っては何だが、挨拶に行って依頼しようと考えた。
不服申し立てについては、こ...
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2006/07/16 07:06 |
敢えて火中の(第五十七回) 第十章 村木法律事務所(1)
昨夜は遅くまで妻や子供たちと話をしていて、寝たのは一時を過ぎていたのだが、六時には目が覚めてしまった。
三週間の拘置所生活で身に付いた早起きの習慣だ。早起きは悪いことではないから、これからも続けて行こうと思っている。
まだ薄暗い庭先に出て、タバコを取り出した。愛犬の『ムサシ』が擦り寄ってきた。ずっと散歩にも行っていないのに、それでも俺のことを覚えているようだ。
たとえ散歩に連れ行かなくても、エサを与えたりしなくても、子犬のときからずっと受けてきた飼い主の愛情を忘れることなく、犬はい...
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2006/07/15 02:27 |
敢えて火中の(第五十六回) 第九章 葉桜の頃(3)
飛田検事が見るようにと言っていた周辺の桜は、既に葉桜という状態だったが、それでも俺の目には新鮮な外界の輝きで一杯のように感じられた。
拘置所の厚い鉄扉を抜けて、待合室のベンチで所在なげに待っている妻の元へ、俺は一歩一歩近付いて行った。
俺に気付いて駆け寄る妻が、小首を傾げて俺に笑い掛ける視線が眩しかった。
「お疲れ様でした」
「ヤクザの出所じゃないぞ」
大変な思いをしてきただろうに、妻のそんなことを露にも出さない気丈さに、俺は本当に助けられている。
拘置所を出てすぐのところ...
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2006/07/14 07:34 |
敢えて火中の(第五十五回) 第九章 葉桜の頃(2)
村木弁護士は免職処分となった理由の中で、同列である筈の島田班長に対する監督責任を、俺が負わされているところが引っかかるとし、法務省は主管班長という言葉に全ての責任を被せようとしているのではないかと考えているようだった。
法務省がそのような頑なな姿勢で来るのだから、保釈を申請しても直ぐには許可が出ないと村木は考えていた。
慎重に進めた保釈申請手続きは遅れがちとなり、保釈が許可され拘置所を出ることができたのは、月が変わって四月になってからだった。
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2006/07/13 07:27 |
敢えて火中の(第五十四回) 第九章 葉桜の頃(1)
その日、面会室で待っていたのは、花村と中島の二人の入国警備官だった。
一日に面会できるのは一回だけだから、彼らと面会すると妻とは面会できなくなる。
それを知っていて俺は、二人の面会に応じた。
鉄格子に仕切られた面会室を見慣れている二人にとっても、まさかかつての上司であり先輩の俺と、鉄格子を介して会わなければならないとは、想像していなかったに違いない。
しかもその上司であり先輩の俺は、法務省入国管理局から告発され、起訴されているのだから、現職の入国警備官が面会するには憚られること...
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2006/07/12 07:31 |
敢えて火中の(第五十三回) 第八章 生きていてこそ(3)
三月二十五日、鉄格子越しに妻の顔を久しぶりに見た。逮捕されてから二週間の時が経っていた。
結婚して十五年経っている。ずっと専業主婦で俺と子供のためにだけ生きてきた女だ。世間知らずのようなところもある。
それが面会したときに真っ先に話してくれたのが、俺が自殺を図るのじゃないかと心配していたということだった。
俺が妻のこと、家族のことを心配していたように、妻も第一に俺の身を案じていてくれたのだ。
しっかりと俺の顔を正面から見据えて、これまでどのようなことを外でやってきたかを、順序立...
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2006/07/11 09:32 |
敢えて火中の(第五十二回) 第八章 生きていてこそ(2)
弁護士が接見に来たのは、逮捕されてから四日が経ってからのことだ。
「九鬼さんの御友人である万田さんの紹介で、弁護をすることになりました。
村木と言います。隣は一緒に弁護をする玉田弁護士です」
低いバリトンでそう言った村木は、弁護士ドラマの主人公にでもなりそうな男前の弁護士だった。
玉田弁護士は女性で、どこかエキゾチックな外国人を思わせる風貌をしていた。
接見室に入った途端に感じた違和感は、玉田弁護士の風貌に負うところが大きかった。
何で外国人の女性が一緒に来たのだろうと、...
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2006/07/10 09:48 |
敢えて火中の(第五十一回) 第八章 生きていてこそ(1)
収容房に戻ると、名前こそ知らないが俺の房の担当係長らしき人が、房の中に入ってきた。
「処分も決まりましたね。起訴されたのですから、後は早く保釈申請を弁護士さんにしてもらって、一日も早くここを出てくださいよ。
昔であればあなたのしたことは、部下の失敗を庇った懐の深い上司と言われることでしょうけど、今は時代がそうではないですからね。
しょうがありませんね。同じ公安職の身でこのようなところに入ることになりショックでしょうけれど、くれぐれもおかしなことだけは考えてはいけませんよ。
若い刑...
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2006/07/09 15:07 |
敢えて火中の(第五十回) 第七章 飛田検事(3)
私は三畳ほどの広さの部屋の中で、膝を抱えてじっと考え込んでいた。
泥仕合になるとは、どういうことなのだろう。
未だ認めていないというのだろうか。
それにしては免職処分も受けているし、起訴されてなお否認しているとは考えられない。
私と稲山は起訴されたものの、何故か大戸は起訴されなかったらしい。いやそれどころか逮捕されたのも、私と稲山の二人だけのようだ。
大戸はどのように供述して、逮捕を免れたのだろうか。
大戸が以前入管の幹部職員の不正を掌握していると自慢していたのを、私は...
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2006/07/08 15:28 |
敢えて火中の(第四十九回) 第七章 飛田検事(2)
午後三時、看守の呼ぶ声に応じて取調室に向かった。
飛田の机の上はきれいに片付いて、入室した私を迎える飛田の顔も心なしかほっとした様子だった。
「行政処分の告知は終わりましたか、稲山さんも免職処分のようです。
大戸さんは二ヶ月の停職、大林さんと畠山さんは減給処分、ことの発端となった島田さんは、戒告処分となったようです。
その他にも本省の総務課長が更迭されたり、多くの方が今回の事件の処理の遅れを問われて処分されたりと、かなり異例な大掛かりな処分となったようです。
それとお二人を、...
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2006/07/07 17:06 |
敢えて火中の(第四十八回) 第七章 飛田検事(1)
目の前の小さなテーブルには、アルマイト容器に入った米麦混合の昼飯が、ひっくり返したまま口も付けずに残っている。
処分の告知を受けた日、再び拘置所の昼食に手が伸びなかった。
初めて拘置所の食事を摂ろうとしたときに、口にした途端に嘔吐感に襲われ、アルマイトの弁当箱にもどしてしまった。
結局その日の夕食には手も付けずに返却したのだが、それを見て親切な刑務官が弁当箱をひっくり返して食べると、白米の方から食べることができて食べ易いことを教えてくれた。
環境の激変によるショック症状だと思わ...
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2006/07/07 08:33 |
敢えて火中の(第四十七回) 第六章 懲戒免職(3)
持って回った分かりにくい文章だ。
私はいきなり最初のところで、何を言っているのだろうかと不審に思った。
それは、最初に大戸課長補佐指揮の下と謳っていながら、島田班長の違反調査における非違行為の監督責任を私に問うているところだった。
指揮官である大戸補佐よりも、主管班長である私の方が責任の幅が広いと言っているのだ。
主管班長というのは、そんなに権限の大きいものだったのだろうか。
担当都県の警察との連絡調整が主たる事務で、同僚である筈の他の班長に対する監督義務まであったのだろう...
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2006/07/06 09:24 |
外国人性犯罪者の矯正は可能か(幼女暴行殺人を犯したペルー人被告に無期懲役判決について考える)
昨日、広島地裁において、幼女暴行殺人に問われたペルー人に対し、判決が下された。
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2006/07/05 10:43 |
敢えて火中の(第四十六回) 第六章 懲戒免職(2)
「被処分者を免職とする。被処分者は、平成八年四月一日から同十年四月八日までの間、東京入国管理局警備第二課調査第一班長として、東京都、埼玉県及び群馬県内における法違反者の摘発及び違反調査等の業務に従事していたものであるが、
1 同局警備第二課調査第一班長として自ら主管班長として実施し摘発した外国人に対する違反調査を行うに当たっては、同外国人の取調べを担当する入国警備官らをして同外国人の動静に注意し適切に看視させるなどして、同外国人の逃走を未然に防止すべく指揮監督する義務があったにもかかわらず、同...
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2006/07/05 08:27 |
敢えて火中の(第四十五回) 第六章 懲戒免職(1)
三月十八日、法務省大臣官房人事課付きの検事と法務事務官の二人が、処分に関する最終調査のために、私と面会した。
既に出来上がった意見書を朗読し、間違いがないかを訊ねた後、それを私に書き写させるという段取りで事務的に時間は進んでいった。
その内容はこれまで私が話してきたことの確認に過ぎず、一時間ほどで終わることになった。
検事から身体の調子は如何ですかと聞かれたが、初対面の人でもあり儀礼的な問い掛けだと思い、私はぶっきらぼうに特に不調なところはないとだけ答えた。
勾留尋問に当たった...
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2006/07/04 08:14 |
敢えて火中の(第四十四回) 第五章 逮捕勾留(4)
「どうしても分からないのですが。何故九鬼さんは、無かったことにしようなんて自分から言ったのですか。
あなたには、そうしなければならない理由はなかったように思えますが。
それと稲山さんも大戸さんも、逃げたのが入管法第六十五条の身柄だと認識していたと供述しました」
驚きだった。
逮捕されるまで否認してきた稲山が、こともあろうに逃げた中国人が任意同行した身柄ではなく、柄受けした身柄だと認識していたと言っているとは、では、私の供述はいったい何の為だったというのか。
それに今この段階に...
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2006/07/03 09:11 |
敢えて火中の(第四十三回) 第五章 逮捕勾留(3)
無様な姿を晒すことなく自己をしっかりと持って、ここはやり過ごさなければならないときだと心に言い聞かせ、信じたくない思いと突きつけられた現実を咀嚼し、自分をやっと制御できる頃には、東京拘置所に着いていた。
拘置所に於いて入所手続きを済ませると、広さが三畳ほどの独房に案内された。
取り調べがあるから食事を摂っておくようにと言われたが、冷めてしまった米麦混合の飯は流石に喉を通らなかった。
自慢できることではないが、私は、収容所や収容場での看守勤務の経験もあるし、今はドラマやドキュメンタリ...
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2006/07/02 07:56 |
敢えて火中の(第四十二回) 第五章 逮捕勾留(2)
午後三時を過ぎていただろうか、やっと小嶋事務官が私を呼びに来た。
部屋に入るといつものように、部屋の奥に窓を背にして飛田が待っていた。
心持ち緊張したその顔に、私は結論が出たのだろうと思い、逸る気持ちを抑えきれず、いつのまにか早足で、一歩一歩検事の側に近づいていった。
後一歩というところで、きれいに片付いている検事の机の上に、一枚の紙が載っているのに気付いた。
反対側から見ているのだが、それは正面から見ているかのように、正確に読み取ることができた。
そこにあるのは、逮捕状だ...
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2006/07/01 17:21 |
敢えて火中の(第四十一回) 第五章 逮捕勾留(1)
その日の朝のことはもう遠い記憶の中にあり、天気が晴れていたのか、曇っていたのかさえ思い出せない。
だが平成十四年三月十一日の月曜日に起きた出来事は、思い出そうとして思い出せるものでもないが、忘れ去ろうとしてもまた忘れられないことだった。
休みを貰った翌日の日曜日の取り調べは、殆んど内容がなかったことから、私は妻に「今日あたり結論が出て、長かった取調べも終わると思う」と言い置いて検察庁に向かった。
午前中はやはり雑談に終始して、取り調べとは思えない雰囲気だった。
昼食はいつものよ...
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2006/06/30 07:47 |
敢えて火中の(第四十回) 第四章 束の間の休息(3)
弥生三月の春の夜といっても、夜の冷え込みは厳しいものがある。
子供には聞かせられないと思い、妻を誘って車を出した。
五年前の五月二十一日に何が起きたのか、そして昨年の六月からどのような調査を受け、さらに告発されたことで今、検察庁でどのような調べを受けているのかについて説明した。
妻は様々な疑問を私に投げかけたが、結局は納得せざるを得なかった。
逃走事件は事実起きたことだし、その事実を隠蔽したのではないといくら言っても、ここまで捻じ曲げられた状況では、誰にも信じて貰えなくなってい...
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2006/06/28 16:46 |
敢えて火中の(第三十九回) 第四章 束の間の休息(2)
「お父さん。キャッチボールしよう」
テレビ番組はいつの間にか終わり、末っ子の勇太がグローブを手にして、私の顔を覗きこんでいた。
険しい顔をしていたのだろう。勇太は不安そうな眼差しで、私を見つめていた。
「よし、早いボール、投げられるようになったかな」
私にも守らなければならないものがある。それが怒りを外に向けさせることを許さなかった。
何ものにも拘らず、自分の思うところを進んで行けば良いのだ。
そしてその評価は回りの者が、正当にしてくれるに違いない。
正直に、素直に、真っ...
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2006/06/28 08:27 |
敢えて火中の(第三十八回) 第四章 束の間の休息(1)
小春日和の暖かな日差しの中にいると、妻が掃除をする音も気にならず、朝起き上がるのが辛くなるほど、のんびりとした気持ちになった。
枕元の時計を見ると、九時を回っていた。
階下では子供たちの笑い声が、テレビの音とともに響いてくる。
土曜日に学校が休みになってから、子供たちと過ごすことができる週末のこの時間は、私にとって貴重なものになっている。
名残惜しい暖かなベッドから勢いを付けて飛び出すと、階段をゆっくりと降りて行った。起きるタイミングを外してしまうと、家族の会話の中に入れなくな...
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2006/06/28 08:27 |
許可される申請から許可したくなる申請への処方箋(入管のお医者さん)
表題を決めて、書き始めたところで、はたと迷いが出てしまった。
入管のお医者さん、などと書き始めると、入国管理局、入国管理センター(いわゆる収容所)にいる医者の話かと誤解されるだろうか。
実は、これも申請取次ぎ行政書士に関しての話なのだ。
どうも最近寄せられる相談内容が、甚だ芳しくない状況にあるからだ。
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2006/06/28 08:26 |
敢えて火中の(第三十七回) 第三章 東京地検刑事部(4)
それ以後の取り調べが坦々と進んでいったのは当然で、昨年の六月から繰り返し話してきたことの、確認の意味しか持たなかったのだから。
それでも取り調べは、連日のように行われた。
だがそれは取調べとは名ばかりで、一緒に私が出たテレビ放送番組のビデオテープを見たりしながら、当時の摘発のエピソードを話したりしていたのだ。
そんなある日のことだ。
「こんなにいい仕事をしているのに、忙しく身を粉にするように仕事をしているのに、何で隠蔽なんてことをしたのでしょうね。
それにこの中国人は窃盗で逮...
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2006/06/26 07:38 |
敢えて火中の(第三十六回) 第三章 東京地検刑事部(3)
取り調べが始まって二日目の夕刻のことだった。
分厚い関係記録の束に隠れている供述調書を拾い読みしている飛田が「九鬼さんの供述の中で、本省の西検事に対する供述が一番変ですよ」と突然切り出した。
「被摘発者名簿の誤記載によって、逃げた中国人が六十五条の身柄ではなく任意同行してきた身柄だと判断したとなっていますが、逃走したのは午後一時三十分以降ですね。
そのときには任意同行してきた身柄の取り調べは、全て終わっている筈ではないですか。
その頃に島田さんが取り調べをしていた身柄が逃げたとい...
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2006/06/26 07:37 |
敢えて火中の(第三十五回) 第三章 東京地検刑事部(2)
「お忙しい勤務をされていたんですね。私たちも毎日のように、最終電車で帰宅するというような生活ですが、入管も大変なんですね。
でも九鬼さん、事実に反することを公文書に記載するというのは、理由がどうであれ認められることではありませんよ。
そして我々もそうなのですが、上司に報告する文書であれば、たとえそれがメモ書きのようなものであっても、公文書となるのですよ」
飛田が言っているのは、摘発結果報告書に逃走した中国人の記載をしないで、人数を削除したまま決裁に上げたことを言っているのだと、直ぐに...
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2006/06/23 10:14 |
敢えて火中の(第三十四回) 第三章 東京地検刑事部(1)
ぐるぐると法務省の中を連れ回され、何度もエレベーターを乗り換えて着いた先が、隣の東京地方検察庁刑事部の一室だった。
ここでこれから本格的な取調べが始まることになる。
細長い部屋の奥に、大きな窓を背にして、一人の小柄な男が立っていた。
「私は検察官の飛田です。横に居るのは立会い事務官の小嶋事務官です。
本日、法務省東京入国管理局長が、被疑者不詳で告発した公用文書毀棄、虚偽有印公文書作成・同行使事件の参考人として、あなたを取調べすることとなりました。
あなたは取り調べに際し、言い...
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2006/06/23 10:13 |
敢えて火中の(第三十三回) 第二章 刑事告発(4)
「本当に今日で終わりますかねえ。それにしても統括は元気ですねえ」
懐かしい思い出に浸る私を、大林の力の無い声が現実に引き戻した。
「今日は処分が出るだろう。これで終わりさ、そうしたら一杯やろうよ。畠山も一緒に」
努めて明るく私は言ったのだが、大林も畠山も頷いて了承はしたものの、どちらも疲れた表情で元気がないように見えた。
どれほど待たせれば気が済むというのだろう。
こんなことならもっとゆっくり来れば良かったと、私は思い始めていた。
処分を受けたい訳ではないが、処分されるなら...
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2006/06/21 10:34 |
敢えて火中の(第三十二回) 第二章 刑事告発(3)
二年前のことだ。
私が可愛がっていた藤元という警守長が、入国警備官の仕事に行き詰まりを感じ、入国審査官に転官したことがあった。
藤元はがっしりとした体躯と、旺盛な好奇心を持ち合わせた優秀な入国警備官だった。
昇任試験にも一発合格し、警守長として摘発の最前線で活躍していた。
だが、上司から言われた何気ない一言が、藤元のその後に影を落とすことになる。
その上司はこう言ったのだ。
「危険な場所には藤元だな。いい身体してるものなあ。防護壁には一番だ」
そのとき藤元は思ったらし...
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2006/06/21 10:33 |
敢えて火中の(第三十一回) 第二章 刑事告発(2)
広いフロアの片隅に、薄汚く埃を被った応接セットとは呼べないような場所が在り、総務課に着いた私はそこに座って待つように案内された。
そこには既に畠山警守長がいた。
武道を嗜む畠山の恰幅の良いがっちりとした身体が、妙に小さく弱々しく私の目に映るのは、当の私自身の気持ちが弱くなっているせいかも知れない。
互いに無言のまま会釈をすると、そこにあった埃を被った事務椅子に私は座った。
常日頃から言葉数が少ないことを知っている畠山であるから、無言のまま一緒に座っていても、不自然な違和感や気拙...
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2006/06/19 08:04 |
敢えて火中の(第三十回) 第二章 刑事告発(1)
二月十四日の夜の新聞記者の来訪から始まった事情聴取のために、これまで幾度となく通ってきた本省への道だった。
浦和駅から京浜東北線に乗り有楽町で降りると、毎日必ず日比谷公園で時間調整をした。
何か一つこだわりを持ちたいと思い、指定された時間丁度に着くようにしてきた。
三月一日の金曜日に、そのいつもの道を来たときには、ある種の感慨さえ湧いてくるのだった。
今日、私が本省に呼ばれたのは、昨年の六月から始まり、中断を経て再開された今回の事件の事情聴取も終わり、最終的な処分を通知されるも...
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2006/06/19 08:03 |
敢えて火中の(第二十九回) 第一章 本省調査(2)
およそ二週間に渡って、土曜も日曜もなく事情聴取は続けられた。
「出入国管理及び難民認定法第六十五条に基づく身柄引渡しは、収容令書が発付されることが要件として定められていますが、収容令書が未だ発付されていないにもかかわらず、何故、被疑者引渡書を渡して身柄受領しているのですか」
西は検察官の立場から、入管法の規定を遵守していない取り扱いに、問題が隠されていると思ったようだ。
「合同摘発における六十五条の身柄引渡しについては、摘発先から帰庁してから収令請求の手続きを執るのですが、警察が身柄を...
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2006/06/16 02:44 |
敢えて火中の(第二十八回) 第二部 守るべきもの 第一章 本省調査(1)
報道された翌日の二月十六日、土曜日、私は霞ヶ関にある法務省本省に呼ばれた。
本省総務課の総括補佐官を訪ねるように指示され、そして総括補佐官に案内された十階の会議室で、私を待っていたのは西という検事であった。
今回の新聞報道を重く見た本省が、地方局での調査に限界があるとして、本省自ら調査を開始するにあたり、本省官房秘書課に所属する検事である西が、私の調査を担当することになったのだ。
調査に当たっては、成田空港に勤務している入国審査官が、以前検察庁に検察事務官として出向していた経験を買...
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2006/06/16 02:31 |
敢えて火中の(第二十七回) 第十三章 新聞報道(2)
『東京入管が公文書廃棄』
『二人の上司は否認するも、部下たちは事実関係を認める』
『公文書廃棄は刑事犯罪、公文書偽造の疑いも』
翌日の毎朝新聞に、その夜の本省や稲山、九鬼らの応答が記事に盛り込まれて報道され、驚くことに発信地は、西日本入国管理センターだということが分かった。
「入管局というのは、何か不祥事が起こっても隠し立てすることが多く、また今回のような不祥事をきちんと処分できないようなら、法務省の看板が泣くというものだ」
「曖昧なままにして済まそうなんて、事勿れ主義に陥っていると...
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2006/06/14 16:58 |
敢えて火中の(第二十六回) 第十三章 新聞報道(1)
二月の夜八時、真っ暗闇の中に門灯が白く寒々しい光を放って、家の前のほんの小さなスペースを浮き上がらせている。
駐車スペースに停めたワゴン車の陰から、突然湧き出したように黒っぽいスーツ姿の男が現れ、チャイムを鳴らした。
「ごめんなさい。あなた出てくれる」
台所で食器を洗っている妻が、テレビを見ている九鬼に声を掛けた。
家を訪ねてくる者は殆んどいない筈なのに、しかもこんな時間にと思いながら九鬼が出てみると、九鬼と同年代くらいのスーツ姿の男が、門扉の側に立っていた。
「毎朝新聞の遠山...
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2006/06/14 16:26 |
敢えて火中の(第二十五回) 第十二章 最初の処分(2)
浦和駅の東口を降りた九鬼は妻に、どのように言って異動を知らせようかと考えていた。
入管に勤めるようになって知り合ったいわゆる職場結婚した妻は、人事異動のことも良く知っており、今回のような一年での異動を聞けば、不審に思うのは当然だった。
だがどう話していいのか、どこから話せばいいのか、九鬼は迷っていた。
できることなら余計な心配を掛けたくないとの思いと、全て話してしまったら妻にも、稲山や大戸に対する恨みのような気持ちを抱かせてしまうのではないかと心配した。
いやそれよりも過去の馬...
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2006/06/13 09:45 |
敢えて火中の(第二十四回) 第十二章 最初の処分(1)
稲山と大戸が本省の片隅で語り合ったように、何の音沙汰もないままその年が暮れて、九鬼たちは新たな年を迎えた。
一月から二月に掛けては、公務員にとって人事異動の発表の季節となり、落ち着かない日々が始まる。
一月の中旬から本省幹部の人事配置が発表されると、後は一週間ごとに順を追って、地方局の人事配置が内示されて来る。
子供の転校手続や引越しの準備などで、一番大変な統括入国警備官クラス以下の発表は、どうしても二月に入ってからになる。
それまでの間は自称人事課長たちが、自分たちの情報収集...
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2006/06/13 09:27 |
手数料納付書の謎(消えた納付書案内)
入管から葉書きが送られてきた。在留資格の変更申請について、許否の結果を通知するから、来いというものだ。
それを受け取った申請取次ぎ行政書士は、いつも受け取る葉書きと記載内容が違っているのに、不審感を抱いた。
以前はあったはずの収入印紙(手数料)についての案内が、書かれていなかったというのだ。
手数料を支払わなくても良いというのは、「不許可」ということなのか。揺れ動く心のままに、申請取次ぎ行政書士は、入管に問い合わせた。不許可なのでしょうかと。
入管は答えた。「電話でお答えするわ...
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2006/06/09 10:48 |
敢えて火中の(第二十三回) 第十一章 処分の行方(2)
埼玉県草加市、国道四号線に沿って広がる埼玉県の東側に位置するこの町は、埼玉県の中でも比較的早い時期から外国人が入り込んでいた。
草加警察署には、無認可でブラジル人の労働者を派遣する会社の、労働者派遣法違反事件の捜査本部が置かれていた。
その日、そこに金山外事課長が来ていることは、花村が捜査本部の警部に確認していた。
「九鬼統括、よく来てくれたね」
「いえ、どういたしまして。課長、それで事件の進捗状況は如何ですか」
外国人の事件を捜査するに当たり、一番難儀するのが身分確認だった。...
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2006/06/08 17:04 |
敢えて火中の(第二十二回) 第十一章 処分の行方(1)
忙しくしているときだけは、何もかも忘れることができて、心の平安が保たれている。
いつしか九鬼は、自分を絶え間ない忙しさの中に、追い詰めるようになっていた。
その後、山下から何の音沙汰もないことが、夏期休暇期間中だからという理由だけではあるまい。
処分して欲しい訳ではなかったが、いつ来るとも知れぬ処分を待っているというのも、落ち着かない変な気分だった。
まさか処分は未だでしょうかと、聞く訳にも行かず落ち着かない気持ちのまま、九鬼は九月の摘発月間を迎えた。
初日の昨日は、早朝から...
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2006/06/08 17:04 |
敢えて火中の(第二十一回) 第十章 最後の摘発(2)
私鉄の駅の直ぐ傍に、その建物はあった。三階建ての鉄筋コンクリート作りの建物には、何の表記もされていなかった。
この辺りの自動車部品工場に派遣されている工員たちの、宿舎として使われているという話だ。
「三階の左から四番目の部屋が、ファビオの部屋です」
先乗りして調べていた中村警守長が、花村にそう説明している。
何人かの人の出入りはあったが、ファビオについてはまだ確認できておらず、部屋にいるのか外出しているのか分からなかった。
九鬼は夜を待って打ち込むことにした。在室していれば灯...
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2006/06/06 18:03 |
敢えて火中の(第二十回) 第十章 最後の摘発(1)
ずっと海を見ていた。
東名高速道路は海岸線に沿って、九鬼たちの乗る車を名古屋方面に導いていた。
上田市役所における摘発は、こちらの動きを察知したアントニオというブローカーによって、偽造証印を行使している者の摘発までには至らなかった。
原野から聞いていたアントニオの居宅にもガサ入れしたのだが、有力な証拠となるものを発見することはできなかった。
いや、一冊の旅券を発見した。
そこには偽造証印シールがあったが、当のアントニオは預かり知らぬこととして、最後までシラを切り通した。
...
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2006/06/06 10:19 |
敢えて火中の(第十九回) 第九章 偽造証印(2)
澄んだ瞳をした美しい女性だった。
その日も窓口に座っていた原野は、申請書を差し出すブラジル人女性に目を奪われた。混血を繰り返しているブラジル人女性には美人が多い。
それは原野が若く独身で、その持てる好奇心の全てを女性に向けているからではない。
市役所の上司も原野に対し「お前はいいよな。忙しいと言っても、毎日のように美人の顔を拝める部署に就いていて、よっぽど俺が代わりたいくらいだよ」と言っては、からかうのだった。
原野の忙しさを知る同僚は、そんな話を真に受けるなと忠告してくれるが...
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2006/06/02 10:51 |
敢えて火中の(第十八回) 第九章 偽造証印(1)
長野県上田市、南北に広がる信州の中央部に位置し、機略を駆使して戦国時代を駆け巡った真田氏が、明治維新後の廃藩置県まで統治していた城下町である。
一都八県の管轄を持つ東京入管は、長野県も当然その管轄地であり、県庁所在地には内陸型出張所である長野出張所を置いていた。
内陸型出張所とは入国審査を行なう空港や海港を持たない、在留審査を専門にする出張所である。
長野出張所の開設により、長野県に居住する外国人の在留手続は、それまでより格段に便利になった。
今でこそ上信越道が背骨のように長野...
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2006/06/02 10:43 |
敢えて火中の(第十七回) 第八章 届かぬ願い(2)
「それと九鬼さんは『元々我々が捕まえてきた身柄ですし、ここは無かったことにしませんか』と言っているが、そう判断した根拠は何ですか」
逃走した身柄が六十五条の身柄であることは、九鬼自身が記名押印した身柄引渡し書が、埼玉県警に保管されていたことから明らかだ。
では、どうして九鬼は逃走当日、その身柄が任意同行して来た身柄だと判断したのか、その判断した根拠について山下は尋ねることにした。
九鬼の目が、忙しく宙を舞った。
難問を突き付けられたときに、九鬼が集中しようとして表す仕種だ。
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2006/05/30 10:23 |
敢えて火中の(第十六回) 第八章 届かぬ願い(1)
企画管理部門は入管の警備部門を人体に例えれば頭脳に当たるのだが、必ずしも適材適所で人員を配置している訳でもなく、定期的な人事異動を繰り返している。
今回のように内部に於いて発生した事件を取り調べるということを、やったことがない職員が殆んどだった。
更には、その取調べを受ける側が上司や先輩である場合の困難さは、九鬼が予想していた以上のものがあった。
何とか事実解明を地方局の段階で治めることができるようにと、願いにも似た沼田の言葉を信じ、九鬼は進んで自分が中心人物になろうとした。
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2006/05/30 10:22 |
敢えて火中の(第十五回) 第七章 探りあう思惑(2)
「稲山さんや大戸さんは、いったい何と言っているのですか」
九鬼は山下が答えてはくれないだろうと思いながらも、そう聞かないではいられなかった。
そんな九鬼に山下は無言のまま、じっと九鬼の顔を見つめることしかできなかった。
稲山や大戸が何と言っているのかを、九鬼に伝える言葉が見つからないのだ。
そうだ。二人は覚えていないと言っていた。
そうして彼らは九鬼以下の部下たちが、勝手にやったことにしたいというのが、あの頑なな顔から明らかに見てとれるのだった。
山下は九鬼という男を理解...
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2006/05/28 05:37 |
敢えて火中の(第十四回) 第七章 探りあう思惑(1)
午後一杯かかった事情聴取が終わり、やっと開放された九鬼は帰宅しようと庁舎の玄関を出た。
初夏の爽やかな風を心地よく感じて歩く九鬼の後ろから、足音高く追いかけて来る者がいた。
大戸だ。
大戸は埼京線を利用するので十条駅、九鬼は京浜東北線を利用することから、東十条駅へ向かう途中だった。
「九鬼ちゃん、終わったの。ちょっと飲んで行かないか」
大戸は本省勤務だったから、今この時間に九鬼と一緒になるのは、大戸も事情聴取を受けていたということだ。
関係者の口裏合わせは当然あってはなら...
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2006/05/28 05:36 |
敢えて火中の(第十三回) 第六章 真相の究明(2)
「幸手警察署との合同摘発の場合は、総数二十八人を摘発し、警察が送致予定で逮捕したのが四人、入管法第六十五条に基づく身柄引渡しを予定しての逮捕が八人、入管が任意同行する者が十六人という内訳だったと思います。
身柄の選別が終わり、任意同行する身柄と共に幸手警察署を九時前後に出発し、帰庁したのはおよそ二時間後の午前十一時頃だったと思います。
帰庁後は地下一階の運動場にコノ字型に机を配置し、中に容疑者を座らせると、調査官が向かいに座って違反調査を開始します。
入管法第六十五条の身柄を警察が押...
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2006/05/25 07:58 |
千葉のフィリピン人女性の生命保険金請求訴訟に寄せて(この人の在留資格は何?)
2006年05月18日03時01分(朝日新聞朝刊)
千葉県で、98年に急死した建材会社員男性(当時34)の生命保険金の支払いをめぐり、受取人のフィリピン人女性(38)が保険会社を相手取って保険金4500万円の支払いを求めた訴訟の判決が17日、千葉地裁佐倉支部であった。竹内純一裁判官は「(女性側が男性に)保険契約を働きかけ、急性サリチル酸中毒に罹患(りかん)させて死亡させたと推認できる」と認定、女性の請求を棄却した。刑事立件されていない事態を、受取人の女性側が「死亡させた」と認定する異例の展開...
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2006/05/24 15:42 |
敢えて火中の(第十二回) 第六章 真相の究明(1)
稲山も大戸も、共にはっきりとした話をする様子がないままに、事情聴取は繰り返し行なわれ、時間だけがいたずらに過ぎようとしていた。
最初、山下の頭の中には、一つの架空のストーリーが出来上がっていた。
だが九鬼の話を聞いていると、次から次へと新たな疑問が湧き出てくるのを禁じ得なかった。
間抜けな話だ。
その場に居た者の誰一人として、逃げた中国人が柄受けした身柄だと気付かなかったと云うのだから。
聞けば聞くほどに山下の予想は外れ、疑問ばかりが膨らんで行くのだった。
山下は摘発業...
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2006/05/23 11:35 |
敢えて火中の(第十一回) 第五章 事情聴取(2)
大阪に戻った稲山は、再び東京へ行って話をするように、局長から言い渡される。
しかもそれまでの態度を改めて、真摯に事情聴取に応じるように戒められたのだ。
自分の席に戻った稲山は、腹の中が煮え繰り返りそうになっていた。
どうして俺が何度も東京まで行って話をしなければならないのか、しかも後輩である山下に事情聴取されなければならないのか、大阪府警は問題としないと言っているのに、何を大騒ぎしているんだという気持ちで一杯だったのだ。
中国人の逃走のことだってそうだ。
あの日、中国人に逃...
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2006/05/19 10:07 |
敢えて火中の(第十回) 第五章 事情聴取(1)
当時の状況について思い出せる限りのことを、関係する職員全員が陳述書にして提出した。
それらの陳述書を集めた後に、企画管理部門の山下首席入国警備官と二人の統括入国警備官による個別の事情聴取が始まった。
広い会議室の隅に、九鬼は座っていた。
九鬼の事情聴取を担当するのは、企画管理部門の山下首席入国警備官であった。
無線機の紛失事件があった当時、あのいい加減な岡田が首席入国警備官に就いていた警務部門が、名称を変えて企画管理部門となっていた。
局内での事情聴取というのは、調べる方も...
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2006/05/16 09:33 |
敢えて火中の(第九回) 第四章 失くなった無線機(2)
川窪の姿を認めた周りの入国警備官たちが、目配せを送ったのに気付くことなく、岡田の話はいつまでも終わりを告げることがなかった。
その場に居たたまれずに部屋を飛び出した川窪の顔は、宙の一点をじっと見つめたまま青ざめていた。
あのまま部屋に居続けていたら、きっと岡田に殴りかかっていただろうと思った。
川窪は生真面目な男だ。
例え無線機がなくなったのが自分の与り知らぬ理由だったとしても、九鬼や大林たち仲間が責任などはないと言ってくれても、それが自分に貸与された無線機だというそのことだけ...
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2006/05/12 10:26 |
アフガン難民は何故に収容されたか(難民認定申請の諸状況)
難民認定申請と退去強制手続きは別個の手続きと考えられており、難民認定申請したからと言って、入管法違反に対する退去強制手続きが停止されるわけではなく、何時でも収容されて、退去強制手続きが執られることはあり得る。
しかしながら通常難民認定申請した者に対する退去強制手続きは、難民認定申請が不認定となったときから開始されるのが一般的で、今回のアフガニスタン人九人のようにいきなりとも言える状況で収容し、退去強制手続きに入るのは珍しい。
このような状況を生んだ理由の一つに、弁護団のこれまでの姿勢が...
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2006/05/11 09:53 |
敢えて火中の(第八回) 第四章 失くなった無線機(1)
机の上に大きな無線機が、充電中であることを示す赤いライトを点滅させて、次の出動の時を待っていた。
九鬼はもう直ぐ点滅を終えて充電を完了するであろう無線機から、青ざめた顔をして戻ってきた川窪に目を移した。
「どうしたんだ。何かあったのか」
川窪は九鬼の問いかけにも答えず、虚ろな目をして机の中を一心不乱に探している。
「どうしたんだ。川窪」
九鬼は川窪の肩に手を置いて、もう一度問いかけてみた。川窪が九鬼を無視したことなど、これまでなかったことだ。
「む、む、無線機が見当たらないの...
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2006/05/10 13:31 |
敢えて火中の(第七回) 第三章 職員召集(2)
「大阪府警はどうすると言っているんだ」
沼田が稲山にそう問い質した。
「表沙汰にはしないと言っていますよ。入管内部で処理しろということでしょう」
浅く椅子に腰掛けた稲山は、沼田の顔を見ずにそう答えた。
「そうか、とにかく内部調査を明日から始めなければならん。稲山さん、悪いが明日、明後日はここに来てくれないか。島田君も一緒に来てくれよ」
今回の事件で急遽大阪から呼ばれて来ていた稲山と島田には、週末の間に事情を聞いておかなければならなかった。
「山下首席。明日、明後日は徳重統括...
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2006/05/05 09:39 |
敢えて火中の(第六回) 第三章 職員召集(1)
平成九年五月二十一日に実施された摘発に従事していた職員が、沼田警備監理官の部屋に集められた。
そこには大阪入管にいる筈の稲山や島田、本省にいる大戸などの姿もあり、集まった人々の疑心暗鬼をいたずらに掻き立てていた。
どの顔も一様に不安げで、これから何が始まるのか固唾を呑んで待ち構えていた。
そんな中で稲山が一人苦虫を噛み潰したような堅い表情で、何ごとか考え込んでいる様子で、一人離れて端の方に座っていた。
九鬼が渡した埼玉県警からファクシミリで送られてきた書類を手に、沼田警備監理官...
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2006/05/03 00:18 |
敢えて火中の(第五回) 第二章 過去の事件(2)
にこやかに受話器を置いた沼田の顔が、にわかに引き締まると「山下君、何で九鬼たちは柄受けした身柄が逃げたことを、きちんと報告しなかったんだろう」と、傍らに座る警務企画部門の首席入国警備官である山下に問いかけた。
山下はそんな沼田の問いかけに、何と答えてよいものか思案に暮れていた。
「そうですね。報告せずに黙っていても、いずれはこのように判ってしまいますものね。それとも彼らはそんなことも分からなかったのでしょうか」
本省勤務の長いエリート入国警備官である山下自身は、現場の経験が少なかった...
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2006/04/28 10:18 |
敢えて火中の(第四回) 第二章 過去の事件(1)
平成十三年六月、一人の中国人の男が窃盗容疑で大阪府警に逮捕された。
中国人の犯した犯罪の中でも単純な窃盗事件で、事件そのものには注目を浴びる要素はどこにもなかった。
大阪府警はいつものように指紋照会をして、その中国人の男が四年前の五月、埼玉県警に不法残留容疑で逮捕され、出入国管理及び難民認定法第六十五条に基づき、東京入管に身柄を引渡されていることを知った。
その事実を知ったときにも、後にあれほどの話題性を持つとは、大阪府警の誰もが思ってもいなかった。
照会を受けた埼玉県警は、平...
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2006/04/28 10:13 |
敢えて火中の(第三回) 第一章 調査第二部門(2)
嵐のような摘発強化月間を過ごした後、九鬼たち調査第二部門の入国警備官は、気を失った男がはっと目覚めて自分のやるべきことに気付いたように、本来の手持ち事件の調査をし始める。
中国人の偽造旅券事件は偽造工場と思われる場所の特定も終わり、二十四時間態勢で現場の張り込みが始まっていた。
不法入国特別調査担当の九鬼を除く五人の入国警備官が、二人一組になって江東区のアパートの一室を見張っていた。
九鬼が摘発を始めた頃には考えられなかった装備品が、摘発先の内偵調査をやり易いものに変えていた。
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2006/04/24 14:58 |
敢えて火中の(第二回) 第一部 入国警備官群像 第一章 調査第二部門(1)
平成十三年四月、九鬼は二年間の成田空港勤務を終え、久しぶりに東京入国管理国局に戻った。
調査第二部門に配属され、不法入国特別調査担当の統括入国警備官の辞令を受けていた。
成田空港という管轄区域を持たない警備部門に配属されていた九鬼は、一日も早くかつてのような摘発三昧の日々を取り戻したいと、飢えた狼のような表情をして東京に戻ってきたのだ。
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2006/04/18 18:15 |
敢えて火中の(入国警備官の話)第一回 序章 幻想からの開放
時間を重ねれば重ねるほど、納得の行かないことがあるとは、思ってもみなかった。
今回の出来事がまさにそうだ。
如何に不可思議なことでも、時間を置いて思い返せば、きっと分かる筈だと思っていたが、問題の解決には何の役にも立たない時間の経過があることも知った。
男は三畳ほどの広さの部屋の中で、膝を抱えてじっと考え込んでいた。
日中の検事調べの他にすることもない男には、考える時間はそれこそ限りなくあった。
それももうすぐ終わりを迎えることになる。
男は鉄格子の嵌まった小さな窓から...
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2006/04/12 09:00 |
資格外活動(不法就労者)容疑者の摘発
この時期になると思い出すことがある。三月と言えば、人事異動も決まり、押しなべてやる気のない役所となるのだが、あの頃の俺たちは違っていた。もう八年にもなるのか。
三月の第一週のことだ。新宿歌舞伎町の韓国クラブに立ち入った。二十人近い韓国人ホステスを連れて役所に着いたのは、午後十時頃だったか。
違反調査に入る前に、選別の作業をしなければならない。不法残留者、不法入国者、不法上陸者そして資格外活動容疑者に、選別するのだ。
それぞれ違反調査するのに、用紙や録取内容などが違っているから、選別...
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2006/03/22 18:30 |
「日本人配偶者」の在留資格認定申請に質問書は不可欠?
在留資格認定申請書を提出しようとして、その人は入管の窓口で、「これには質問書が付いていませんね、こちらを書いて持ってきてください」と言われた。
その人は申請取次ぎ行政書士だ。その行政書士はむっとして、「理由書も付いていますし、これでは駄目なのですか」と何とか踏みとどまった。
窓口の入国審査官は、提出された書類の中に「理由書」を見つけて、その内容をしばらく見ていたが、「今回はこれでいいですが、次からは質問書を付けてくださいね」と言って、申請を受理するのだった。
取り敢えず申請が受理さ...
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2006/03/10 17:09 |
入管が何処を向いているのかは、人事異動でわかる
今日、入管の人事異動の内示があったらしい。細かな異動が多いが、比較的大掛かりな人事異動になっているようだ。
「入国警備官物語(偽造旅券の謎)」にも書いたが、この時期は入管職員にとって落ち着かない時期だ。
昇進や昇任する者にとっては、異動は喜ばしい反面、その時期が子供の進学が重なる者や異動できない理由を抱えている者にとって、三月の下旬までにやらなければならないことが目白押しの慌しい時期となる。
とりわけ左遷人事と思われる異動命令を受けた者の心中は、察して余りあるものがある。もっとも「...
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2006/02/27 15:45 |
偽造旅券の話4 口頭審理状況その2
口頭審理時において、上陸を許可するに足らない理由が、その所持する旅券が偽造乃至は変造の疑いがあるとき、口頭審理の結果によっては、退去命令ではなく、退去強制を受けることがあり得るのだ。
いまは新東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港の三箇所に、偽変造文書鑑識センターが設置され、入国してくる外国人の所持する旅券等の文書の真贋を、短時間で判定することができる。
だが、いまから二十年も前の成田空港では、怪しい旅券であっても、余程の決め手がなければ、偽造であると断定はできなかった。
余程の...
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2006/02/15 15:28 |
偽造旅券の話3 上陸審査における口頭審理
上陸審査ブースで旅券を提示して、査証に合わせた上陸許可証印を受けられなかった外国人は、ブースの入国審査官の呼び出しブザーでやってくる特別審理官に引き渡される。
上陸が許可されなかった理由が、入管法第五条(上陸拒否事由)に該当する者であった場合や特別な手配や、要注意国の者であった場合などは、口頭審理に回された時には、殆んどアウトだといえる。
口頭審理は事務机を挟んで、申請者と特別審理官の二人が密室に置いて、対峙することで始まる。
その段階では殆んどの申請者が、上陸を許可されず口頭審理...
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2006/02/08 15:33 |
偽造旅券の話 2 上陸審査状況
入国審査官は限られた時間の中で、その旅券が真正なもので、写真もその指し出した当人と同一であることを確認し、ブラックリストにも登載されていないことも確認する。
入国審査ブースに配置された入国審査官ができるのは、上陸を許可するか、ブースに設置された呼び出しブザーで、特別審理官と呼ばれる上位の入国審査官を呼ぶこと、このどちらかしかできない。
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垣田審査官は、入国警備官から転官して4年になる。入国警備官の仕事は好きだったが、田中は増え続ける不法残留者を摘発するだけでは、減少...
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2006/02/03 15:20 |
偽造旅券の話
人がその所属する国から他の国へ旅行するとき、その人の国籍、氏名、年令等の身分事項を証明するとともに、その人が安全に旅行できるように要請する文書が記載されているのが、いわゆる旅券である。
旅券を入手できなかったり、旅券申請それ自体を知らず、渡航手続き一切をブローカー頼みにした時に、多くは偽変造の旅券が利用されることになる。
旅券の偽造と言っても、冊子を丸ごと偽造するものもあれば、中のページを差し替えたり、写真を貼り替えたりするなど、その仕様は多岐にわたっている。
二十年前に流行ってい...
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2006/02/01 11:29 |
入国警備官はどのようなことをしているのか
一枚の偽造旅券コピーが事件の始まりだった。
背後にブローカーの存在が。
入国警備官の追跡は、ブローカーへと迫るが・・・・
入国警備官物語―偽造旅券の謎
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2006/01/30 14:28 |