ムサシが逝ってしまったよ(2)

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 子供たちも皆小学生だったから、関東近郊のキャンプ場にも家族総出で出かけたな。
 長野、山梨、群馬、栃木、神奈川、静岡、俺は今でも昨日のことのように思い出すことが出来る。
 知り合いの警察官から「ハスキーは馬鹿だから、飼い主に噛み付いたりするよ」と言われたが、ムサシ、君は本当に賢くて、近所の駒場運動公園で躾をしていると、散歩中の他の飼い主から「お利口さんですね、良く言うことを聞いて」「すごいね、ちゃんと座って待っているよ」等々の賞賛の声を浴びて俺は鼻高々だったよ。
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 年に一回の狂犬病の予防注射のときも、泣き叫び走り回る犬たちに囲まれて、悠然と注射を受けている君は哲学者の風貌をしていた。
 知らぬ間に年を重ねて行った俺たちは、いつまでも十六年前に初めて会った頃の気持ちでいたんだ。俺が年を取った以上に、君が衰えているということに気付けなかった俺を許してくれるかい。
 散歩しても、よろよろと歩く君をどうしてやることも出来ずにいた俺に「もういいよ、散歩ももう直ぐできなくなるよ」といった目で見たような気がする。そしてとうとう寝たきりになってしまったね。
 親の介護さえしたことがなかった俺だが、君の最後の世話は一生懸命にさせて貰ったと思っているよ。君は分かっているだろうけれどね。
 十六年の月日を共にしてきて、悲しいけれど君との最後のひと時(一ヶ月)が、俺とムサシ、君とのもっとも親密に過ごした時となった。
 ムサシ、たくさんの喜びをありがとう。厳しくしたり、犬は外で飼うものだといって家に入れてやらなかったり、俺も後悔する事は多々抱えているけれど、君を選んで、飼ったことは本当に良かったと思っています。
 土曜日には、君の葬式をする。君のその雄姿を見ることはもうない。でもムサシ、君は精一杯、犬として生きて、最高の姿を飼い主に刻み付けて逝くんだ。俺は決して君のこと、君と過ごした日々のことを忘れないだろう。俺のことはもう気遣わなくても良いから、もうゆっくり休みなさい。そうして一足先に行って待っている仲良しだった猫の「コジロー」とまた一緒に遊ぶんだよ。
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 終わり

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