十四 逃走の果てに(12)

 富樫は気付いただろうか?富樫の事務所からUSBに記録した日本旅券を不正取得させた中国人のリストをコピーして持ち出してホアホアは逃走したのだった。
 首元までズッポリと不正取得に絡んでいる富樫が、今となっては一番ホアホアの存在を消したいと思っている筈だった。
 劉真栄がいなくなり、不正取得について薄々感づいている稲川も所在が分からなくなった今では、事件の全体像を知っているのは、富樫とホアホアの二人だけだった。
 何れ捕まった時に、自分が責任を負わなければならないことと、そうではないことをハッキリさせるためには、事務手続きを行った富樫の作成したリストが不可欠なのだった。
 ずっと持ちつ持たれつの親密な関係を続けてきた富樫が、自分を不要な者、それ以上に危険な存在だと感じ始めたからには、もう一緒にいられないと思った。
 十年以上も日本に滞在しているにも関わらず、意外と身を寄せる場所が無かったことに、ホアホアは苦笑いするしか無かった。

 続く

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