十五 強制送還(1)

 整理が行き届いていた富樫の事務所の中は、天地をひっくり返したように雑然としていた。
 部屋の隅のソファーには腫れ上がった顔を、掌で覆い隠すようにして富樫が座っていた。
 回りを取り囲んでいた男の一人が口を開いた。
「リストはこのパソコンの中にあったものだけなのか?」
 男の日本語はかなり流暢ではあったが、聞く者が聞けば微妙にイントネーションの違いに気付くものだった。
「私が持っているのはそれだけだが、ホアホアがコピーしている可能性はある」
 口の中を切っているのか、答える富樫の声はくぐもっていて聞き取りにくかった。
「ホアホアは何処にいるんだ?」
 更に殴りつけようとする者を手で制しながら男は富樫に問いかけた。
「ショウナンかも知れない」答える富樫の声は更に聞き取りにくかった。

 続く

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