十五 強制送還(7)

 一台のパネルバンが廃工場に停まった。運転席と助手席から降りた二人の男は、後ろの扉を開ける。
 そこから十人程の男女が降り立った。
「久し振りだよ。貨物のようにすし詰めで車に載せられ移動したのはな」
「文句を言うなよ、今回は行き先も定かでない、不安な移動じゃないんだから。皆が今後も安心して日本に居るために、さあ、もうひと踏ん張りだ」
 そう声を上げた男の指示を受けて、十二人の男女が一斉に工場内の建物に散って行った。
 廃工場の中は思いの外に整頓されていた。西日が消えかかろうとする施設内の一角にその機械はあった。
 室内をぐるり見回した男は、日が落ちた後に微かに光り輝く光景を目にして、ほうっと溜息をついた。
 それは男がこれからやろうとする現実から、一瞬にして非現実の世界に導こうとするかのように、美しい光景だった。

 続く

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