十五 強制送還(12)

 自分の墓場となる穴を掘り進めながらホアホアは、回りを取り囲む中国人たちのその先に、人の気配を感じていた。
 ホアホアの身体がすっぽりと埋まるくらいに掘り進めたその時、「いつまで黙って見ているの?」ととっぷりと暮れた闇を切り裂くような悲鳴が聞こえた。
 取り囲んだ中国人たちに緊張が走る。遠くから幾本もの光が中国人たちを捉えた。
 闇の中から男たちが走り寄ってくる。
 先頭を走って来たのは、髭面の男だ。九鬼だった。
 林静を目掛けて一直線に駆け寄る九鬼を、林静を守ろうとする中国人の男が手にする得物が払おうとした。
 九鬼が進むのを一瞬躊躇ったその瞬間、九鬼の後ろからすり抜けるように近づいた男が得物を手にした中国人の顎に正拳を打ち通すと、中国人の男は揉ん取りうって倒れこんだ。
 障害の無くなった九鬼は、そのまま林静の腰のあたりにタックルして押し倒したまでは良かったが、勢い余ってホアホアの掘った穴に落ちてしまっていた。

 続く

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