偽装結婚について考える(13)

 奥の部屋から、寝起きの女が目を瞬かせて出てきた。俺達の姿を見て、一瞬にして目を覚ましたかのように、口をぽかんと開けると、声も出ないような様子だった。
 俺はその好機を逃すことなく畳み掛ける。
「本当に住んでいたのは、ここだったんだね。***さん。でも、戸締まりはしっかりとしないといけないね。今日から入管に泊まって貰うよ。持って行くものがあるなら、準備してくださいな」
 女性の入国警備官の手を借りながら、女は身の回りの品物を手早くまとめると、俺が鍵を返し終えて戻った時には、玄関先で待っていた。
 ことここに及んで逃走する気配も心配もなかったのだが、俺を先頭に女の傍には女性の入国警備官をピッタリと張り付けて、その前後を二人の男性入国警備官が注意を払いながら静々と護送した。
 エレベーターを降りて外に出たその時だった。路上に黒いベンツが駐車しており、そこから一人の男が降りてきた。
 男の姿を見つけた女の表情が、一瞬緩んだかのように見えたのは錯覚だったのかもしれない。
 男は俺達の集団を見つけると、真っ直ぐに俺のもとに向かってきた。頬には会長が示したような切り傷はなかったが、間違いなくその筋の男であると身体全体で主張していた。

 続く

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