警備処遇中の事故について考える(5)

 事故処理は、救急隊に引き継いで終わりとなるのだったが、俺には未だ、やらねばならないことがあった。身柄を受け入れるに当たって、引き渡された状況に違和感を覚えたからだ。
 朝の点呼を終えてから、それは俺の心の中にずっとわだかまっていた。
 身柄を送り出した拘置所へ電話して、それははっきりとしたのだった。
「昨日、貴所から身柄受領した*****人*******についてお聞きしたいのですが、、、」俺の話が終わるまでもないその時、受話器の奥でハッと息を呑む音が聞こえたのだ。
 やはり身柄受領した外国人には処遇上気をつけなければならないことが存在していて、それがきちんと引き継がれていないのだと、俺は確信した。
「どういうことでしょうか?」そう話す刑務官の言葉が微妙に揺れている。
「今朝方、自損行為を図りまして、病院に搬送中なのですが、貴所において特異な行動や言動はありませんでしたか?更に投薬等の引き継ぎがありませんでしたが、貴所においても投薬等は行っていなかったのでしょうか?」
 暫く待たされた挙げ句ではあったが、その後、収監中に異常な言動があったので、抗うつ剤等の投与をして処遇していたということだった。
 何故、身柄を引き渡すに当たって、投薬状況を引き継がなかったのかということについては、投薬後には異常な言動を特に確認しなかったと言っていた。
 拘置所とのやり取りと救命措置をとった警備官の状況を時系列で報告書に纏めて報告した。
 この時は、残念ながら病院で帰らぬ人となったが、発見が早く懸命な救命措置により一時蘇生したこと、病的な状況をきちんと引き継がなかった結果であることなどから、対応した入国警備官に不利益な処分が下ることはなかった。

 続く

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