摘発のすすめ(臨検・捜索・押収許可状について)

 内偵調査に基づいて、摘発先を選定する話の前に、許可状の話をしたいと思います。
此処まで散々詳細な内偵調査の話をしておいて、ひっくり返すようなことを言うのも何なのだが、容疑者の写真があり、その者が外国人であり、違反を疑わせるような調査報告があれば、臨検許可状は取れるだろうと思います。
 また、これまでの話の中でも、内偵調査している対象が外国人であるということを立証することが必要であることは言うまでもありません。
出入国管理及び難民認定法の退去強制の対象は外国人であるから、幾ら詳細な調査をしても、対象者が外国人でなければ入国警備官の取り締まり対象とはならないからです。
 入国警備官の摘発は、これまで原則的に相手の承諾を得ての任意調査が行われているが、何処に行っても多数の不法残留者や不法入国者がいるという時代ではないから、これからの摘発には、事前に十分な内偵調査を行った上での、強制調査が主流とならなければならないと考えている。
 嘗て、臨検許可状の効果について、議論したことがある。本省においては、臨検許可状によって、錠を開けて立ち入ることができると解釈されているというが、俺は、臨検許可状によって立ち入ることができるのは、特定の条件下に認められるものだと考えている。
 確かに、臨検、現場に立ち入り、五感の作用を用いて調査、摘発を実施することが認められる臨検許可状であるから、臨検許可状があっても施錠されていて立ち入れないというのであれば、臨検許可状を請求する意味はない。
 だが、入管法第32条において必要な処分として、捜索又は押収をする為必要があるときは、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができるとされていることから、臨検許可状においてできる処分については、捜索・押収許可状に基づくものよりも限定されるものと考えられる。
 では、臨検許可状の執行によって、正当業務行為であるとされるものには、どのようなものが考えられるのであろうか。
 立ち入る先が、工場等の事業所、クラブやスナック等の飲食店舗、これらの場所で誰もが出入り可能な状態にある営業時間帯であれば、相手の同意を得て任意のままに着手できるところ、摘発を察知して施錠に及んだり、阻止行動に及んだりした場合には、臨検許可状を用意しておくべきだと考える。
 これに対し、個人の住居等に立ち入る場合は、臨検許可状だけでは十分ではないと考える。
 憲法は住居の不可侵を保障しているが、その不可侵も司法官憲による許可状の執行までには及ばないとされるところ、入国警備官が請求する臨検許可状が住居に対する不可侵の保障を排除する司法官憲の発する許可状であるかどうかが問題となる。
 一見すると、臨検許可状は、住居の不可侵の保障を排除する司法官憲が発する許可状と思えるが、入管法が臨検許可状の他に、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができるとする許可状として、捜索・押収許可状を挙げている意味を考えると、これまでお話してきたように、臨検許可状によって臨検する目的を達する為の必要な処分が行えるのは、個人の住居を除くものだと考えるべきであろう。
 それでは臨検許可状を持っていても、それほどの意味はないなと考えることがあるかも知れない。
 そうでもないのである。夜間の飲食店舗や開放された工場などの事業所に立ち入るに当たり、それを拒否された場合などには臨検許可状があることで、強制的に立ち入ることができるし、内部から施錠された場合などにも、鍵屋を呼んで開錠して貰う為にも臨検許可状が必要となるからだ。
 容疑者個人の特定や具体的な容疑内容の特定が必要となる捜索・押収許可状に比べて、容疑者が外国人で入管法に違反している疑いが濃厚である場合に、そこに立ち入って確認する必要性を疎明することで発付される臨検許可状は、摘発時に起こりうる不測の事態に対応する為には有効なものだと言える。
 また、臨検許可状を執行して摘発を行った場合、臨検の状況を調書にして記録するのだが、現場の位置状況や接客状況などが容疑を立証することになる資格外活動に係る摘発では、臨検調書それ自体が証拠物となることからも有用なのである。
 特に今回の話は、統計上の不法残留者数が減少した現在の摘発であるから、その対象は単純な不法残留者の摘発ではなく、隠蔽工作を施していたり、偽変造の文書を行使したり、他の犯罪に関与していたりする、いわゆる悪質な方違反者の摘発であるから、その摘発に当たっては、極力、許可状請求の上、強制調査となることが考えられるのである。
 強制調査に当たっては、これまでお話してきたように、入管の立ち入り、そうして摘発する為に発付される臨検許可状は、刑事手続上の立ち入りには発付されないところ、行政手続きである入管の立ち入りについて発付されているのだという意味を考えて、適正に執行することが望まれるのである。
 退去強制手続という行政目的を達成する為に強制的に立ち入ることを、裁判所が、刑事手続よりも簡便な内容の請求により許可しているのだということを十分に認識した上で執行しなければならない。

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