摘発のすすめ(不法残留者が減少した時代の摘発)2

情報の収集管理

 入国管理局は、一年の中で決まった時期に、集中取り締まり月間を設定して、その間、警察や関係機関と合同で取締りを実施してきた。
 最近は組織の改変などと相俟って常時摘発体制をとっているらしいが、摘発の入り口ともなる違反者、ブローカー、違反の態様などの情報収集及びその管理はどうなっているのだろう。
 現在は管理職にはPCが与えられており、あらゆる情報は一元管理できる状態にある。
 だが、セキュリティの問題もあり、実際に収集した情報が有効に管理分析されているだろうか。
 嘗て、PCも普及していない頃は、警備官が地区別に、国籍、氏名等、人数、違反態様などを書き込んだ一覧表を作り、それを細かく短冊切りにして組み替え、摘発予定一覧表として利用したこともあった。
 アナログな代物だったが、一箇所に多くの違反者がいた当時の状況下では、非常に重宝した。
 予定していた摘発先での失敗を、一覧表から引き出した近隣の摘発先に転進し、実効を挙げたこともある。
 現在はそれがデジタルで収集管理されているのだから、その活用方法は以前と比較しても格段に良くなっている。
 ただ、寄せられる情報は、違反者の数が少ないものであったり、情報そのものの信憑性が疑われるものであったりしているであろうから、やはりファーストインプレッション、最初にその情報に触れた者の情報に対する重要度、確実性、信憑性を判断する感覚、追跡調査が必要となる。

 情報の内容が中途半端で漠然とした内容であったり、一人、二人といった被摘発予定者数が少ないものであったり、被害感情が表面に出すぎていて、何か違反しているのだろうが、その内容が判然としないものだったり、情報、提報というものは、その一つ一つはジグソーパズルのピースであると考えた方が良いものだ。
 しかもそのピースは模様がはがれていたり、欠けていたりするものだから、受け取った者が摘発に結びつかないと簡単に判断される恐れもある。
 漠然としたものの取り扱いは、種別に分けて類似の提報・情報を検索して比較検討するのが良い。
 たとえば国籍別に、地域別に、男女別に、容疑内容別に、ブローカーや関連者等のあだ名や氏名別に、それらの種類ごとに情報や提報を整理し、比較検討してみることだ。
 一つ一つは不完全なものも、二つ、三つと集まると、少しずつ形を成して、追跡調査をする糸口が掴めるのだ。
 予想摘発者数が少ない提報や情報については、嘗てのような大量摘発を求められてはいないのだろうから、とにかく場所が特定できて、違反の内容が固まりさえすれば、摘発を実施すべきだと思う。
 捕まえた一人で事件が終わるのか、それから派生するのかは誰にも予測できないのだから。

 被害感情が余りに強くて、通報している内容に具体性が乏しいケースには、時として通報者と連絡が取れる場合がある。
 どうしても捕まえて貰いたいものだから、自分の氏名や電話番号、住所などを記載しているようなケースだ。
 こういった場合は通報者と連絡を取り、来庁を求めて通報内容について、補充の聞き取りをすることができる。
来庁してくれるのならば、通報した人物がどのような人であるのか、また、電話や文書では確認できなかった、乃至は確認し忘れた部分を聞き取ることができる。
 こうして話をすることで、通報者は話を聞いてくれているという安堵感から、冷静な話しぶりになることが多い。
 こう言った場面で、強圧的な話し方や内容も然程の内容でないにも関わらず、しつこく何度も同じ内容の通報をして来て、摘発を急がせる様な通報者の中には、ある思惑や利害が関係する者がいることがあるので、取り扱いには注意を要する。
 それについて経験したケースのお話をしよう。

 明らかにその筋の者だといった風体の男が、若い男を連れて訪れてきた。
「何度も情報提供しているのに、何故、摘発しないんだ」
と言って、摘発実施を促しに来たのだ。
 男は警察関係者の名前や政治家の名前などを持ち出し、自分が如何に社会的に力を有しているかを誇った挙句、断種していて家族などがいないから、怖いものなどないなどといった意味不明の発言にまで及んだ。
 長々と一時間余り話しながら、摘発しろという飲食店舗の詳細を記載した文書を手渡した。
 いろいろ言ってはいたが、要は俺の言うとおりに摘発をしろと言っているのだ。
 通報してきている店舗は、それまでも何度も電話で、封書で摘発しろと言ってきている店舗だった。
早急に摘発しますと言ってお帰り願ったのだが、結果的に、忙しさや通報者の胡散臭さから、摘発実施することはなかった。
数年後、警察との合同摘発で、初めて立ち入った筈の店舗の名前が、どこかで聞いたことがあると思い調べてみると、放っておいたその通報先だった。

 摘発先の女たちを調べて行く中で、通報者が何を目的として、しつこく通報してきたのかが分かった。
 通報者は店に行っては、ママや経営者等に、「俺は入管に顔が利くのだが、このような店は摘発などされたらひとたまりもないだろう。俺が後ろ盾になってやるから・・・」等と言って、暗に金銭や接待を強要していたのだった。
 しかし思うようにならなかったので、入管に通報してきたのだった。
 あの時、通報を受けて直ぐに摘発でもしていたのなら、通報者は摘発後、店でこう豪語したのだろう。
「だから俺が守ってやると言ったのに、言うことを聞かないから、こんな結果になるんだ。今後は・・・」
 このようなことで、裏を考えないで通報を鵜呑みにして摘発を実施しようものなら、通報者に良いように利用されるところだった。
 胡散臭さもさることながら、通報者はいたる所で同様の強要をしていたらしく、明らかに同一人物からの通報だと思われる類似の通報が散見されていた。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント