摘発のすすめ(内偵調査)1

内偵調査

 情報や提報から摘発先を選定したならば、実際にその場所へ行って、現状や状況等を調査する必要がある。
 嘗ては住所・地番だけを把握して、いきなり転進したこともあるが、摘発先に辿り着けたとしても、現場の状況を知らないままでは不測の事態が起き易いし、事故防止の観点、許可状による強制調査の実施を考えた場合、現地における内偵調査の実施と成否が重要となる。
 孫子にあるとおり、敵を知り己を知らば百戦百勝、敵を知らず己を知らざれば百戦百敗、自分たちの摘発実施における力量、摘発実施に投入・参加させることができる人的資源、摘発部隊を展開させ囲い込む作戦の指揮監督をする者の能力等が如何ほどのものなのかを知ることが己を知ることとなる。
 己を知ることと併せて、対象の数、現場の機材等危険物の配置状況、逃走経路、集合させた時の待機場所、時間によっては現場の照度、等凡そ確認した方が良いと思われることは、細大漏らさず確認すべきである。
 こうして自己の力量を正確に把握し、対象の状況等を知悉することで、効果的な摘発が実施できる。

 さて出張稟議書を切って、車両で行くか、公共の交通機関を使って、足を使って内偵するかを決めよう。
 基本的に交通機関の発達している都内や夜間の飲食店舗の内偵には、公共交通機関を使った方が都合がよい。
 遠隔地であったり、回りに建物がないような監視に適さない場所であったり、内偵予定先が複数ある場合には、車両を使用するのが移動を考えても便利だと言える。
 ただ、公用の車両を使用することで、車両番号やその体裁から内偵調査が行われていることを察知されないように、私用車を利用することも考えた方がよい。
 それに柄受けや送還の為に護送車両として使われることが多いから、車両が空いていない場合もあるし、俺などは主任のとき、配車表がブランクであったのを幸いに、勝手に内偵調査に使ったところ、警務の記載漏れで使用する予定の車両を使ってしまったことがあり、帰庁して当時の警務係長から大目玉を食らったことがある。
 一方的に俺を攻め立てたりしたのなら、抗弁もするところだが、その係長は「いや、配車表をきちんと管理していない私の方が悪い、ただ、使ったのなら、そこに使用していると記載してくれ」と言って注意されたのだ。
 大目玉を食らったと言ったが、それは嘘で、どちらかと言うと俺が一番苦手なお願いみたいな注意だった。それにしても好き勝手をやっていたものだと、今は反省している。
 それからは自分の車や一緒に行く部下の車を使うことが多くなった。

 内偵調査を実施する時間帯はどうあるべきか。基本的には摘発を実施する予定の時間帯に内偵調査を行うべきである。
 しかし居宅の摘発は、早朝に行われることが多いから、その時間に合わせて実施したいところだが、深夜に出発して早朝に内偵を実施することは稀なことで、通常は執務時間内に収めようとして、九時くらいに出発してさらっと回るというのが常態化しているのではないだろうか。
 実際に居宅を昼頃に訪れても、早朝に訪れても、夜間に訪れても、建物の外観、敷地内の状況、出入り口の確認、居室の配置・構造などについて知ることは容易である。
 だから必然的に執務時間内に行われるのだろうが、必ず身柄を確保する、臨検・捜索・押収許可状を請求して、強制調査をするというものであれば、早朝、日中、夕刻、夜間の全体において内偵調査を行うべきである。
 何故なら、対象者がいつどの時間帯に在宅しているのかを知ることが必要であり、対象者が複数いる場合は、全員が揃っている時間帯はいつになるのかを知ることが重要だからだ。

 一部屋に数人ずつ居住し、そんな部屋が集合しているアパートや長屋の摘発であれば、多人数を摘発することができるから、時間を掛けて内偵調査を実施しようということにもなるだろう。
 しかし近頃のような一部屋に多くて二人くらいで、それもひとつのアパートに一部屋しか対象者がいないということが多い現況では、なかなか難しいのかも知れない。
 だが、記録上の不法残留者が三万人を切るようになった現在の摘発に、何が求められるのかと言うことを考えるが良い。
 それは量的な数ではなく、質的な数なのだと言うことだ。少なくなったと言っても三万人だ。しかも不法入国者は算入されていない。
 まだまだ違反者はそこにいるのだ。三万人超の違反者が少ないと認識するか、未だ多いと認識するかはその者の感性によるところが大きい。
 そうした中で摘発先を選定するポイントは、単純不法残留者ではなく、不法入国関連の容疑者、偽変造文書や虚偽文書関連の容疑者、不法就労関連容疑者、集団的な違反事件の関連容疑者、等のこれまで悪質事案と呼ばれ、最も着手したかった事案である。
 時間と手間が掛かることで、摘発件数の多寡を求められていた時代になかなか着手できなかった事件を、じっくりと時間を掛けて実施することができる環境が整ったと考えることだ。

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