摘発のすすめ(内偵調査)6

 内偵調査を実施しているときに、入管法違反者に出遭うことがある。特に居宅や事業所の内偵調査で、周辺の聞き込みを行っていて、出遭ったときにどうしたら良いだろうか。
 入管法違反事件に重要事件や軽微な事件の別はない。違反者は、どの者も等しく違反者であるから、そう考えてしまうと、そこはその場で収捕、乃至は任意同行を求めるといった方法しかないのだろう。
 だが、内偵調査で追い掛けているのが不法就労助長や不法入国幇助に関わっているブローカーであったり、集団不法入国関係者であったり、入管法違反者でも特殊なものであった場合には、一考を要する。
 聞き込みを行って遭遇した入管法違反者が、不法残留者であった場合などは特にそうだ。出頭申告した場合に、今で言う出国命令制度に係るもので、収容しないままに手続きが進められるケースであれば、本来の目的を放棄してまで収捕、任意同行を求めるのはどうかと思うのだ。
 そうなる前に、内偵調査を中断するか、敢えて身分を明かして、出頭申告することを勧めて、目的である内偵調査に協力を求めるかを考えた方が良いと思う。

 中断する方法としては、新聞の勧誘や不動産の営業などを装って、適当に会話して早々に退散すること、これは開かない扉を開ける方法でもあり、使い方によっては非常に有効です。
 それには常日頃からの異業種の人の経験や営業手法などを聞いたり、研究したりすることが欠かせません。
 内偵調査や違反調査で証人として、容疑者として取り調べや聞き取りで話を聞くことがあったら、雑談の中で色々な話を聞くといったことが必要であり、そうすることで調査官としての幅を持たせることにも繫がって行くものです。
 今は高校を卒業して直ぐに入国警備官になる者は少なく、学生時代に様々なアルバイトや職業に就いてから採用される者が多くなっていますから、人間的に幅のある入国警備官が多いのかもしれませんが、それでも日常的に研究、学習することは重要であると思います。
 嘗て、事業所を摘発した時に、事業所の経営者から「俺のところの若い従業員を持って行くのだから、お前のところの若い奴を置いて行け、そうじゃないと潰れてしまう」と言われたことがありました。
 不法就労者を雇用しているリスク、いつ何時でも入管に摘発されてもおかしくない状態にしていたことによるリスクは、雇用主が負わなければならないもので、それを漫然と放置していたあなたに代わりの従業員を置いて行けなどという権利はないと突っぱねました。
しかしそのとき部下の何人かは置いていって、その業種の経験を積ませるのも悪くないという思いが、頭をよぎったのも事実でした。

 内偵調査の結果、提報のとおりの実態がそこにあるのか、追跡していた者がそこにいるのか、調査している事実がそこで証明されるのか、結果を踏まえて摘発計画を作成する為には、これまでお話してきたような内偵調査が必要だと考えるものです。
 調査の結果、読んでいたようなものではない場合には、摘発を中止・取り止めするという選択もあるし、内偵先の変更をして再度、内偵調査を実施しなければならないということもあるでしょう。
 費用を掛けて内偵調査したのに、結果、摘発に結びつかなかったと言っても、このとき無駄に終わったという調査結果も大切に保存しておくことが必要です。
 それぞれが経験であり、実際に調査した者でなければ認知・認識できないこともあり、全く予想もしていなかった事件とどこかで繋がっているのかも知れないからです。
 入国警備官が、確固とした目的と意思を持って行う内偵調査に無駄であるといったことはないと考えるべきです。
 無駄な内偵調査にしてしまうのは、結果を失敗だとして全て廃棄・忘却しようとすることにこそあります。
 記憶しなさい。自分の行動を逐一記憶しなさい。それを頭のメモリーに蓄積しなさい。そうすることで、入国警備官としての資質は間違いなく向上するものです。
 さあ、出張稟議書を切って、街に出よう。

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