十五 強制送還(14)

 午後遅くになっていた。警察から今回摘発した中国人グループの身柄が移送されて到着した。  日本人の戸籍を利用し、成り済まそうとした者たちは、数人を除いて全て摘発していた。  検察は主犯格のホアホアを始めとする全員の起訴を考えたが、その手続の膨大な事務量を思うと、刑事手続を執る者を絞り込むこととした。  それも戸籍を利用するために殺…
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十五 強制送還(13)

 九鬼の闇雲な突進を阻もうとする男を、正拳の一突きで排除した花村は身体を独楽のように回転させながら、周辺の男たちを次々と打ち倒していった。  男女の区別なく瞬く間に制圧を終えた花村は、部下たちにそれらの者の護送を命じると、穴の中にいる九鬼たちの様子を見ることにした。  暗闇の中に三人の顔が薄ぼんやりと白く浮きだして見えた。 「統括…
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十五 強制送還(12)

 自分の墓場となる穴を掘り進めながらホアホアは、回りを取り囲む中国人たちのその先に、人の気配を感じていた。  ホアホアの身体がすっぽりと埋まるくらいに掘り進めたその時、「いつまで黙って見ているの?」ととっぷりと暮れた闇を切り裂くような悲鳴が聞こえた。  取り囲んだ中国人たちに緊張が走る。遠くから幾本もの光が中国人たちを捉えた。  …
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十五 強制送還(11)

 ホアホアを林静以下五人の男が取り囲んでいた。それぞれの手には凶器となり得るものが握られている。  そんなものを手にしなくとも、ホアホア一人をどのように処理することも可能だと林静は思っていた。 「黙って出して貰えますよね、そうしたら貴方を入管まで連れて行きます。そうして大人しく国へ帰って下さい。  後のことは我々で上手くやって行き…
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十五 強制送還(10)

 階段をゆっくりとした足取りで昇ってくる音を聞いて、ホアホアは最初に自分の居場所を突き止めたのが誰であるのかを悟った。  最悪の状態であることを、ホアホアは自覚しなければならなかった。  事ここに及んで自分の運の悪さを嘆くことは、今のホアホアの脳裏には浮かんではいない。  逆に身内から沸々と湧いてくる力を感じていたのだった。  …
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明けましておめでとうございます2016

明けましておめでとうございます 今年も年賀状は出しませんので、この場を借りて、新年のご挨拶をさせていただきます。 昨年は忙しく駆けまわることとなり、忙しくも充実した一年でした。 ただ、残念だったのは執筆の方が一向に進まなかったということです。 今年はバランス感覚を持って、あらゆる方向の仕事、創作を少しでも加速して進めたいと思って…
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改めて難民について考えてみる(5)

 それに加えて、申請者の中には、就労可能な在留資格が取得できなかったり、在留期間の更新ができなかったりした場合に、取り敢えずといった形で難民認定申請する者が多く存在するというのも、更に難民申請を困難にさせている。  申請を取り次ぐ行政書士や弁護士、支援者の中には、在留資格の変更申請や在留期間の更新が上手く行かない場合には、難民認定申請…
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改めて難民について考えてみる(4)

 こうしてみると今、ヨーロッパで発生しているシリア難民などは、当に紛争から逃れてきている条約難民であると言えるのだが、そう言った現在進行形の避難民が日本に逃れてくることを阻むもの、そこに横たわるのは日本との距離の問題である。  着の身着の儘で紛争から逃れてきた避難民が、航空機を利用して日本に到着することは、不可能ではないにしても、普通…
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改めて難民について考えてみる(3)

 難民に認定される者の数が少ない理由には、所謂条約難民ではない経済難民が申請者の大部分を占めていることにも一因がある。 【難民の地位に関する条約】 第一章 一般規定 第一条 「難民」の定義 A この条約の適用上、「難民」とは、次の者をいう。 (一)千九百二十六年五月十二日の取極、千九百二十八年六月三十日の取極、千九…
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改めて難民について考えてみる(2)

 平成25年に我が国において難民認定申請を行った者は3,260人であり,前年に比べ715人(約28%)増加しました。  また,難民の認定をしない処分に対して異議の申立てを行った者は2,408人であり,前年に比べ670人(約39%)増加し,申請数及び異議申立数いずれも,我が国に難民認定制度が発足した昭和57年以降最多となりました。  …
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改めて難民について考えてみる(1)

 明日、11月5日、ロイター通信の記者の取材を受けることになった。  日本においては一般の関心の薄い難民問題に関する取材だ。  俺の経歴から考えたのだろう。収容所における問題点について、取材したいという意向だった。  そこで改めて日本の難民政策、難民とされる者たちの処遇などについて、考えてみることにした。  取り敢えずは、明日の…
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いまさら聞けない入管の話 62 許可葉書を貰ったのに何故許可されないのか?(6)

 そこで問題となるのは、入管の窓口での対応である。本人たちの言い分によると、申請中に出国しても問題はないのかと問い合わせたところ、問題はないとの回答を得たということだった。  申請したその時に問い合わせたのだとしたら、申請者が「短期滞在」であることが容易にわかるのだから、回答した窓口の担当者に瑕疵がある。  但し、今の入管における窓…
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いまさら聞けない入管の話 61 許可葉書を貰ったのに何故許可されないのか?(5)

 では、何故、「短期滞在」では、在留資格変更許可申請をしている最中に、出入国をしては駄目なのでしょうか。  「短期滞在」には数次査証もあることから、同じ「短期滞在」なら良いだろうと判断している方もいるようですが、「短期滞在」の在留資格は、例え数次査証であっても、一回限りの在留資格なのです。  一度、出国してしまえばそこで閉鎖され、次…
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いまさら聞けない入管の話 60 許可葉書を貰ったのに何故許可されないのか?(4)

 ここまでの話の中で、勘の良い方は今回の事案についての回答を導き出せたと思いますが、ひとつずつ検証してみたいと思います。  在留資格認定証明書交付許可申請が許可となり、認定証明書が交付された時、日本にいようが外国にいようがどちらでも良いので、外国にいるのなら証明書を元に在外の日本大使館等で査証申請し、日本に入国すれば良い。  偶々、…
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いまさら聞けない入管の話 59 許可葉書を貰ったのに何故許可されないのか?(3)

 帰国した二人は再び日本へ戻ってきた。一人はみなし再入国で、一人は「短期滞在」で新規の入国を果たした。  二人が再び日本に戻ってから程なく在留資格変更許可申請にかかる通知葉書きが届いた。  葉書きを持って証印窓口に着いた二人を待っていたのは、思いもよらぬ入管の対応だった。 葉書きを受け付けた審査官は、奥に引っ込むとしばらくして窓口…
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いまさら聞けない入管の話 58 許可葉書を貰ったのに何故許可されないのか?(2)

 「技術・人文知識・国際業務」を持つ者の配偶者として、「家族滞在」の在留資格を得るための在留資格認定証明書交付許可申請については、俺が指示した通りの文書を用意して、申請したところ、交付された。  その時、新婚であった二人は既に日本に入国していた。配偶者は「短期滞在」の資格で入国したのだった。  認定証明書が交付された二人は、誰に相談…
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いまさら聞けない入管の話 57 許可葉書を貰ったのに何故許可されないのか?(1)

 以前、在留資格変更許可申請を取り次いだ外国人の関係者から、「先生、一体どうなっているの入管は?」との電話があった。   俺が元入管職員であるが故のクレームに近い電話だ。内容は俺が取り次いだものではないから、俺にクレームをぶつけるのはお門違いなのだが、職員とのやり取りにおける誤解や行き違いに基づくものだと思われるので、これからお話しよ…
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十五 強制送還(9)

 マイクロバスを運転している花村は、助手席に座る九鬼の姿を見ながら苦笑いを禁じ得なかった。  九鬼の手帳に記されていたホアホアの前件に係る記録を大渕が聞いたのだが、複雑な記号や地図の断片と覚しき内容で、口頭で聞いても良くわからないのだった。  結果、班員を乗せたマイクロバスを花村が運転し、本局に居る九鬼を迎えに行くことになったのだ。…
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十五 強制送還(8)

 男たちは組織だった流れるような態勢で、ホアホアの捜索を始めた。  頭と思われる一人の男は、ホアホアの言っていたことを思い出していた。  ホアホアはここで生まれ変わったと言っていた。  思うようにならない糞のような日本での生活が、ここで入管の摘発を逃れることができたことで、中国人の中で幸運と優れた才覚を持った男だと認識されるように…
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十五 強制送還(7)

 一台のパネルバンが廃工場に停まった。運転席と助手席から降りた二人の男は、後ろの扉を開ける。  そこから十人程の男女が降り立った。 「久し振りだよ。貨物のようにすし詰めで車に載せられ移動したのはな」 「文句を言うなよ、今回は行き先も定かでない、不安な移動じゃないんだから。皆が今後も安心して日本に居るために、さあ、もうひと踏ん張りだ…
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