テーマ:入国警備官

今を生きる入国警備官のために 怒りのコントロール(5)

 俺は通常、少し乱暴な口調で話すことが多いのだが、それも怒りをコントロールするために、結果有効なものとなっている。 もともと地声が大きいのに加えて、ぞんざいな口調で指摘したり、反論したりすると、相手は俺が怒っていると考えるので、意外にこちらの説得や指示に従うこととなった。  逆に俺の怒りが本当に募ったときには、ことさらに丁寧な口調…
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今を生きる入国警備官のために 怒りのコントロール(4)

 如何に温厚な俺と言っても(ここは笑うところだ)、嫌な言動に遭遇したり、上司から理不尽な指示を受けたりして、それなりにストレスが溜まってしまうこともある。  溜まり方が緩やかで許容量が多い俺は、ほんの少しのストレスに対しても、その場で発散するようにしたのだった。  収容場での点呼の時に、騒然として無秩序な状態にあった室内で、手にした…
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今を生きる入国警備官のために 怒りのコントロール(3)

i 怒りの沸点が高い俺はそれまでの人生の中で、あまり人に裏切られたり、侮辱されたり、謂われない暴力を受けたことはなかった。  つまり比較的に幸せな人生だった訳だ。それは自分にとって良い環境であったのだろうが、人の悪意について感じる能力が鈍感になってしまうことにもなったようだ。  悪意に満ちた言動を善意に解釈したり、貶めようとする言葉…
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今を生きる入国警備官のために 怒りのコントロール(2)

 人はどんな時に怒りを覚えるのだろう?暴力を振るわれた時、侮蔑された時、謂れ無き非難中傷を浴びせられた時、様々なケースが考えられるが、怒りの衝動が沸点に達するまでには、個々人の性格や対峙する相手の態様によっても違ってくる。  俺は自分で比較的に怒り易い性格だと思っていたが、実際はそれほどでもなく、あまり人の言葉や態度に直ちに反応してい…
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今を生きる入国警備官のために 怒りのコントロール(1)

 最近、ロードレイジ、路上の怒りについての事件が多々発生しているが、入国管理局の職員にも、怒りの感情が湧いて、とんでもない状況に置かれることもある。  収容場の警備において、違反調査時において、護送そして送還時において、様々な事件が、事故が起こったことがある。  それらの中で、不可抗力の事故であるものもあれば、個人的な感情のコントロ…
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俺の経歴

名 前: 久保一郎 性 別: 男 誕生日: 2月20日 午前6時10分 血液型: O 型 rh(+) 星 座: うお座 職 業: 小説家 国際法務コンサルタント  行政書士(申請取次行政書士) メールアドレス:ichiro-oni.3794@jcom.home.ne.jp 経 歴: 昭和53年 4月 横浜入国者収…
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帰国を希望していた者が翻意すること

 出頭申告した段階では、入国警備官の説諭を聞いて、一旦帰国してから再度、入国しようと思った容疑者が、帰宅後に親族などからの説得を受けて、在留希望に翻意することは容易に考えられる。  今回の案件もそうだった。問題は出国命令制度に沿って帰国させようとした入管の指示に反し、その手続を変更しようとしたところにある。  そりゃあ、準備していた…
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偽装結婚について考える(15)

 結婚を偽装したことを認めたものの、退去強制に当たっては、容疑は不法残留容疑でしかない。  告発も考えたが、警察は立件することに難色を示したので、強制送還することだけで事件は終結した。  事件化されにくいというのは、偽装結婚を事件化する場合、結婚した当事者とともに、偽装結婚を斡旋したブローカーを押さえることが必要だからだ。  今回…
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偽装結婚について考える(14)

 男は直ぐに状況を理解したようだった。二人の男を従えて、俺の方に向かってくる。  緊張の一瞬かと思ったが、意外に俺は落ち着いていた。この男が部屋にいなくて良かった。そんなことを考えていたのだから、室内で揉めるようなことだけは避けたかったからだ。  何しろ打ち込みの時は、あのように言って準備のできていない被摘発者を言いくるめたが、感心…
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偽装結婚について考える(13)

 奥の部屋から、寝起きの女が目を瞬かせて出てきた。俺達の姿を見て、一瞬にして目を覚ましたかのように、口をぽかんと開けると、声も出ないような様子だった。  俺はその好機を逃すことなく畳み掛ける。 「本当に住んでいたのは、ここだったんだね。***さん。でも、戸締まりはしっかりとしないといけないね。今日から入管に泊まって貰うよ。持って行く…
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偽装結婚について考える(12)

 エレベーターを降りた俺達は、部屋の前で配置に着いた。配置と言っても閉鎖された空間への打ち込みだから、裏口を抑える必要もなく玄関先に散開しただけだったが、それでも確認しなければならないことも多々ある。  不在ではしょうがないので、最初に在宅しているのを確認しなければならない。  在宅しているのを確認するには、電話等で在宅しているよう…
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偽装結婚について考える(11)

 女性の入国警備官を含めて、総勢五人の態勢で池尻大橋の居宅に踏み込むことにした。  オートロックのそのマンションは申告してきた居住地とは別格の様相を呈していた。直接、訪問する訳にも行かないので、どうしたものかと思案していたところ、外出しようと出てきた住人が玄関を開けたときに中に入り、聞き込みをしてみることにした。  親切な住民で、そ…
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偽装結婚について考える(10)

 女はそこに住んでいないということになると、固定電話が置かれている所が違うのではないかと考えた。  電話会社に申告してきた居住地の固定電話の設置場所を紹介してみると、当該の電話番号は申告してきた住所になっていた。  それでは電話に応答した後、すぐに外出し、戻ってきたということか?  そう思いを巡らせ始めた時、電話会社のオペレーター…
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偽装結婚について考える(9)

 俺はもしかすると申告したときの住所地にいないのではないかと考え、「今日は家にずっといますか?」と尋ねると、「はい、用もないので家にいますよ」と答えが返ってきた。 「そうですか、では、もう一度訪ねてみますので、室内を見せて下さい。よろしく」そう言うと、「はい、わかりました」と答えたのだった。  現地にいる橋山に、家にいると言っている…
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偽装結婚について考える(8)

 実態調査に当たっては、事前に連絡を入れてやることはない。況してや偽装結婚を疑っている事案の実態調査であるから、抜き打ちに実施することにした。  役所で待っている俺に、橋山から連絡が入った。居宅を訪ねたが応答がないというのだ。近隣の聞き込みを行ったところ、そのような夫婦が住んでいるという認識もないというものだ。  ここで、はい、居住…
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偽装結婚について考える(7)

 事件に着手したのは抗議を受けてから、更に半年ほど経ってからだ。少し寝かせておこうという考えもあったが、他の案件で手一杯だったというのが真相だ。  それまで全く接触していなかったので、取り敢えずは呼び出してというのが順序なのだが、俺は現地調査をすることを選択した。  当時、在留を希望する事件を担当する在宅事件班は、俺の他に三人の男性…
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偽装結婚について考える(6)

 不法残留していたので、出頭申告して来て、在留特別許可を貰おうとする日本人の男は建設作業員で、韓国人の女との年齢差は三歳、その点では普通の結婚のようにも思えるケースだった。  4月に引き継いで、俺が担当することになった時には、出頭してから既に半年が過ぎていた。  当時は収容しないで在宅で調査する案件が溜まりに溜まっており、違反調査は…
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偽装結婚について考える(5)

 不許可とするには、追跡調査が必要となる。疑わしいと思っていても、入管側に疑わしい事実を証明する必要があるからだ。  追跡調査にはどのような手法があるのだろうかをお話しする。  第一には現地調査である。夫婦が同居しているとされる住所地に赴いて、その居住実態を調査することだ。  現地調査においては、そのタイミングが重要である。偽装結…
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偽装結婚について考える(4)

 偽装結婚ではないかと疑いを持たれるのはどのようなケースだろうか?  夫婦である二人を呼んで直接面接を実施すれば、二人の間に、微妙な雰囲気を感じ取り、違和感を覚えることが偽装結婚を疑う要因ともなるが、書類審査におけるものでは、申請書等に記載されている内容から推測する以外にはなく、スナップ写真ではその関係性を確認することは難しい。  …
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偽装結婚について考える(3)

 偽装結婚して、在留資格の変更許可申請をしてきた者についての審査は、どのようなものであるかを考えてみよう。  申請するに当たり、提出する書類は、申請書、婚姻の事実が記録された文書、扶養する者の課税状況を示す文書、身元保証書、質問書(結婚するに至った経緯や資産状況、過去の履歴、親族関係の状況等を説明したもの)、スナップ写真等である。 …
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偽装結婚について考える(2)

 結婚を偽装してまで「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」等の身分に関する資格を得ようとする目的の多くは、就労の制限がないことが主たる理由である。  短時間で多くの報酬を貰おうとすると、やはり風俗関係の仕事に限るのだが、その仕事に就くには活動内容に応じた在留資格では就くことができないからだ。  中には愛人関係にある者が既婚者…
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偽装結婚について考える(1)

「バイキング」では、発言することを控えていたが、偽装結婚について、思うところをお話したいと思う。 結婚を偽装するのは、二つのタイプに分けられる。  一つは就労することが認められない在留資格を有する者が、就労について規制がない配偶者に係る資格に変更しようとするもの  二つ目は、既に入管法に違反している者が、そのまま在留を継続しようと…
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十五 強制送還(18)

「もう収容してから二週間も経っているじゃないか?まだ、調べることが必要なのか?」  調査部門の首席入国警備官が花村にそう問い質した。収容場の収容可能人員が限られていることから、退去強制令書が発付された者は、速やかに送還してしまうのが通常だった。  退去強制令書が出てからも、違反調査と称して花村は何度もホアホアを取り調べていたが、収容…
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十五 強制送還(17)

 元は同じグループの中国人たちも、時を経て立場や回りの環境が変わるに連れて、利害が衝突してきたことが、内部分裂した理由だった。  ホアホアは東京入管の収容房で一人考えに耽っていた。  夜、日毎に寝付きが悪くなっている中で、やっと眠れたかと思うとそこに劉真栄の顔が浮かんできた。  稲川の供述から事件の全容が解明されることはなかった。…
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十五 強制送還(16)

 ホアホアは不法残留容疑で違反調査を受けて、口頭審理の請求も異議の申し出もすることなく、違反審査の認定に服し、収容されて三日後には退去強制令書が発付された。  中国人グループの者たちも、不法入国や不法残留容疑で取り調べを受け、それぞれあっという間に退去強制令書が発付された。  後は帰国する航空便を確保して、強制送還するばかりとなった…
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十五 強制送還(15)

 強制送還される理由については、他人名義の旅券等を行使して入国したりした不法入国容疑、許された在留期間を超えて在留している不法残留容疑、就労が認められていない在留資格のまま不法就労した資格外活動容疑が殆どの送還理由となるが、今回摘発した中国人グループについては、薬物犯罪や殺人、日本人になりすましたり、生活保護費の不正受給、正規の手続きを…
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十五 強制送還(14)

 午後遅くになっていた。警察から今回摘発した中国人グループの身柄が移送されて到着した。  日本人の戸籍を利用し、成り済まそうとした者たちは、数人を除いて全て摘発していた。  検察は主犯格のホアホアを始めとする全員の起訴を考えたが、その手続の膨大な事務量を思うと、刑事手続を執る者を絞り込むこととした。  それも戸籍を利用するために殺…
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十五 強制送還(13)

 九鬼の闇雲な突進を阻もうとする男を、正拳の一突きで排除した花村は身体を独楽のように回転させながら、周辺の男たちを次々と打ち倒していった。  男女の区別なく瞬く間に制圧を終えた花村は、部下たちにそれらの者の護送を命じると、穴の中にいる九鬼たちの様子を見ることにした。  暗闇の中に三人の顔が薄ぼんやりと白く浮きだして見えた。 「統括…
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十五 強制送還(12)

 自分の墓場となる穴を掘り進めながらホアホアは、回りを取り囲む中国人たちのその先に、人の気配を感じていた。  ホアホアの身体がすっぽりと埋まるくらいに掘り進めたその時、「いつまで黙って見ているの?」ととっぷりと暮れた闇を切り裂くような悲鳴が聞こえた。  取り囲んだ中国人たちに緊張が走る。遠くから幾本もの光が中国人たちを捉えた。  …
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