テーマ:小説

出版・行政書士登録から10年になりました

 今年の三月で、行政書士登録して10年になりました。  ほぼ同時期に一冊目を出版しているので、小説家として、行政書士としての生活が10年をこえることとなった。  思えば様々な人と繋がって、困難なときも、順調なときも、いつも誰かの支えや助けを受けてきたような気がします。  特に明日が変わる訳ではないだろうが、色々なことに、数多の人々…
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十五 強制送還(18)

「もう収容してから二週間も経っているじゃないか?まだ、調べることが必要なのか?」  調査部門の首席入国警備官が花村にそう問い質した。収容場の収容可能人員が限られていることから、退去強制令書が発付された者は、速やかに送還してしまうのが通常だった。  退去強制令書が出てからも、違反調査と称して花村は何度もホアホアを取り調べていたが、収容…
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十五 強制送還(17)

 元は同じグループの中国人たちも、時を経て立場や回りの環境が変わるに連れて、利害が衝突してきたことが、内部分裂した理由だった。  ホアホアは東京入管の収容房で一人考えに耽っていた。  夜、日毎に寝付きが悪くなっている中で、やっと眠れたかと思うとそこに劉真栄の顔が浮かんできた。  稲川の供述から事件の全容が解明されることはなかった。…
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十五 強制送還(16)

 ホアホアは不法残留容疑で違反調査を受けて、口頭審理の請求も異議の申し出もすることなく、違反審査の認定に服し、収容されて三日後には退去強制令書が発付された。  中国人グループの者たちも、不法入国や不法残留容疑で取り調べを受け、それぞれあっという間に退去強制令書が発付された。  後は帰国する航空便を確保して、強制送還するばかりとなった…
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十五 強制送還(15)

 強制送還される理由については、他人名義の旅券等を行使して入国したりした不法入国容疑、許された在留期間を超えて在留している不法残留容疑、就労が認められていない在留資格のまま不法就労した資格外活動容疑が殆どの送還理由となるが、今回摘発した中国人グループについては、薬物犯罪や殺人、日本人になりすましたり、生活保護費の不正受給、正規の手続きを…
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十五 強制送還(14)

 午後遅くになっていた。警察から今回摘発した中国人グループの身柄が移送されて到着した。  日本人の戸籍を利用し、成り済まそうとした者たちは、数人を除いて全て摘発していた。  検察は主犯格のホアホアを始めとする全員の起訴を考えたが、その手続の膨大な事務量を思うと、刑事手続を執る者を絞り込むこととした。  それも戸籍を利用するために殺…
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十五 強制送還(13)

 九鬼の闇雲な突進を阻もうとする男を、正拳の一突きで排除した花村は身体を独楽のように回転させながら、周辺の男たちを次々と打ち倒していった。  男女の区別なく瞬く間に制圧を終えた花村は、部下たちにそれらの者の護送を命じると、穴の中にいる九鬼たちの様子を見ることにした。  暗闇の中に三人の顔が薄ぼんやりと白く浮きだして見えた。 「統括…
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十五 強制送還(12)

 自分の墓場となる穴を掘り進めながらホアホアは、回りを取り囲む中国人たちのその先に、人の気配を感じていた。  ホアホアの身体がすっぽりと埋まるくらいに掘り進めたその時、「いつまで黙って見ているの?」ととっぷりと暮れた闇を切り裂くような悲鳴が聞こえた。  取り囲んだ中国人たちに緊張が走る。遠くから幾本もの光が中国人たちを捉えた。  …
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十五 強制送還(11)

 ホアホアを林静以下五人の男が取り囲んでいた。それぞれの手には凶器となり得るものが握られている。  そんなものを手にしなくとも、ホアホア一人をどのように処理することも可能だと林静は思っていた。 「黙って出して貰えますよね、そうしたら貴方を入管まで連れて行きます。そうして大人しく国へ帰って下さい。  後のことは我々で上手くやって行き…
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十五 強制送還(10)

 階段をゆっくりとした足取りで昇ってくる音を聞いて、ホアホアは最初に自分の居場所を突き止めたのが誰であるのかを悟った。  最悪の状態であることを、ホアホアは自覚しなければならなかった。  事ここに及んで自分の運の悪さを嘆くことは、今のホアホアの脳裏には浮かんではいない。  逆に身内から沸々と湧いてくる力を感じていたのだった。  …
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十五 強制送還(9)

 マイクロバスを運転している花村は、助手席に座る九鬼の姿を見ながら苦笑いを禁じ得なかった。  九鬼の手帳に記されていたホアホアの前件に係る記録を大渕が聞いたのだが、複雑な記号や地図の断片と覚しき内容で、口頭で聞いても良くわからないのだった。  結果、班員を乗せたマイクロバスを花村が運転し、本局に居る九鬼を迎えに行くことになったのだ。…
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十五 強制送還(8)

 男たちは組織だった流れるような態勢で、ホアホアの捜索を始めた。  頭と思われる一人の男は、ホアホアの言っていたことを思い出していた。  ホアホアはここで生まれ変わったと言っていた。  思うようにならない糞のような日本での生活が、ここで入管の摘発を逃れることができたことで、中国人の中で幸運と優れた才覚を持った男だと認識されるように…
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十五 強制送還(7)

 一台のパネルバンが廃工場に停まった。運転席と助手席から降りた二人の男は、後ろの扉を開ける。  そこから十人程の男女が降り立った。 「久し振りだよ。貨物のようにすし詰めで車に載せられ移動したのはな」 「文句を言うなよ、今回は行き先も定かでない、不安な移動じゃないんだから。皆が今後も安心して日本に居るために、さあ、もうひと踏ん張りだ…
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十五 強制送還(6)

 移動するとしたら、もうそろそろ行動に移さないとならなかった。お守り代わりのプラスティックチップを入手するために立ち寄ったのだが、ズルズルと長居をしてしまっていた。  余分なプラスティックチップをポケットに仕舞い込んだホアホアは、何処か心が落ち着いて、次の一歩を踏み出す決意が固まっていた。  夢と希望を抱いて日本に来て、善いことも悪…
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十五 強制送還(5)

 様々な思惑と目的を持った集団が千葉県の工場を目指していた。  ある集団は自分たちの犯した不正を隠蔽するために、また別の集団は外国人が犯した不正を暴き摘発するために、双方ともに国道十六号線をひた走っていた。 「コンピューターの解析にえらく時間がかかったが、居場所さえ判ればこっちのもんだ」 「そうだな、パムこと劉真栄がいないホアホア…
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十五 強制送還(4)

 花村は中止処分された事件を取り扱った者の名前を確認すると、内線電話を掛けるのだった。 「はい、十年以上前になりますが、覚えていらっしゃいますか?はい、記憶力の良いことは承知しています」  電話口の相手は大きな声で笑って答えていた。会話の内容は受話器を充てていない大渕たちにも丸聞こえだ。 「ああ、覚えているよ。そうか、摘発先の記載…
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十五 強制送還(3)

「場所がわからないのに、早く行かなければ消されてしまうと言われてもなあ」 「ホアホアが初めて捕まった場所だと言うんですが、その摘発記録が出て来ないんです。色々とやってみたのですが、これは地下倉庫の事件記録を漁らなければ駄目ですかね」  大渕はそう言うが早いか、事件記録が収納されている地下倉庫に向かうのだった。  ホアホアを早く捕ま…
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十五 強制送還(2)

「ショウナン?なんだそれ!いい加減なこと言うなよ」 「止めろ、ちょっと待て!ショウナンって神奈川の湘南なのか?何故、ホアホアは神奈川にいるんだ?」  締め上げようとする男を制して、男は富樫に問いかけた。  緩められた首筋をさすりながら、くぐもった声で富樫は答える。 「千葉の沼南にある会社だ。ホアホアがお前たちと絡むようになったき…
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十五 強制送還(1)

 整理が行き届いていた富樫の事務所の中は、天地をひっくり返したように雑然としていた。  部屋の隅のソファーには腫れ上がった顔を、掌で覆い隠すようにして富樫が座っていた。  回りを取り囲んでいた男の一人が口を開いた。 「リストはこのパソコンの中にあったものだけなのか?」  男の日本語はかなり流暢ではあったが、聞く者が聞けば微妙にイ…
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十四 逃走の果てに(13)

 広大な中国であれば何処かに身を潜めながら、起死回生の機会を伺うこともできるかもしれないが、狭い国土の日本では身を潜めることは難しかった。  いくら日本名を名乗り日本旅券を取得したと言っても、見かけは日本人と変わらなかったとしても、やはり偽物は偽物でしかなかった。  途中で仕入れてきた食料も底をつきかけていた。空腹を抱えながらホアホ…
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十四 逃走の果てに(12)

 富樫は気付いただろうか?富樫の事務所からUSBに記録した日本旅券を不正取得させた中国人のリストをコピーして持ち出してホアホアは逃走したのだった。  首元までズッポリと不正取得に絡んでいる富樫が、今となっては一番ホアホアの存在を消したいと思っている筈だった。  劉真栄がいなくなり、不正取得について薄々感づいている稲川も所在が分からな…
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十四 逃走の果てに(11)

 北浦和駅を降りた陳美蘭は周囲の目を気にすることなく、力強い足取りでそのビルに向かった。役所に行った筈の片岡がその後ろを付けていることにも気付かないでいた。 「私にもわからないよ。ホアホアが何処にいるのかだなんてね」 「ホアホアは昔の仲間にも追われていると言うじゃないの。先生とあのやくざ者しかホアホアは頼れない筈よ」 「それを言う…
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十四 逃走の果てに(10)

 花村は陳華平の追跡調査の見直しを迫られていた。  陳美蘭が提出した立ち回り見込み先のリストは、ホアホアが居住していたり、事務所として使っていたりする中国人関係の場所ばかりだったが、ホアホアが嘗て仲間であった中国人からも追われているとなると、そこに身を寄せる筈はなかった。  海老川から連絡を受けた花村は、ホアホアが仲間だった筈の中国…
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十四 逃走の果てに(9)

「陳華平は何処にいるんだ?一緒にいたんじゃないのか?」 「ああ、ずっと一緒だったよ。それがふっといなくなってしまったんだ。陳にとって俺は命の恩人であるとともに、俺にとっても陳は俺の集団殺人などの無罪を証言してくれる者でもあるんだ。早く捕まえてくださいよ」 「お前は陳が隠れていそうな所などは知らないのか?」 「知っていりゃあ俺が連れ…
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十四 逃走の果てに(8)

 荒川の河川敷で大量に発見された死体について、身元が判明したものは二体だけだった。  その一体は中国人の劉真栄であることは分かっていた。  だが、日本人であると思われるその他の死体は、一人を除いて何処の誰かも分からないままであった。  日本人と思われる者達を殺害したのは、陳華平とその仲間である劉真栄だと海老川たち警察は考えていたが…
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十四 逃走の果てに(7)

 報酬を与えるといった利害で結ばれた関係は、利益を与えることができなくなったその時に解消されるだけではなく、逆に裏切りや報復を生むことになる。  海老川の鋭い視線の先に座っているのは、稲川という暴力団の準構成員だ。いや、準構成員だったというのが正確で正しい稲川の今の身分だ。 「殺したのは中国人の劉真栄だと言うんだな。殺害されて荒川の…
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十四 逃走の果てに(6)

 メイランと片岡が一緒に入管へ行ったときに、早くホアホアを捕まえてくれと言っていたメイランの言葉に、その後、片岡は不信感を抱いていた。  警備官に真剣な表情で愁訴するその姿を見て、一時片岡はホアホアに対する恋情が失くなったのだろうと考えた。  だが、その後の夫婦関係はすっかり冷め切ったものとなっており、いくら片岡が誘っても何かと理由…
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十四 逃走の果てに(5)

 渡された弁当を手に持ち片岡は、メイランの見送りを背に家を出た。  それも端から見れば新婚間もない仲の良い夫婦の、微笑ましい朝の風景に見えるに違いない。  メイランの視線を背中に感じながら、その日も片岡は駅への道を辿ろうとしていた。  駅に着いたその日の片岡はいつもの二番線のホームではなく、反対の一番線のホームに立ち、東京方面の電…
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近いうちにコミックの話ができると思います

 テレビドラマ化の話や次回の出版の話、そしてコミック化の話など色々ありましたが、そのどれもがなかなか進まない中で、やっと、コミックの話が進みそうです。  申し入れがあってから4年になろうとしていますが、その間、少しずつ進んでいたのは確かだったようです。  近いうちに出版のご案内をしたいと思っていますので、数少ない俺の愛読者の皆様にお…
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十四 逃走の果てに(4)

 片岡の日常は相変わらず判を押したように、規則正しく過ぎて行く。ただ違っているのは、朝起きた時にはメイランが台所で調理する音が聞けることだ。  絵に描いたような幸せな光景、そうだ、正に絵に描いたような生活だった。  メイランの体調が思わしくないという理由と外国人と結婚したことで部署が変わった片岡の仕事が不規則なものになったことで、寝…
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