十四 逃走の果てに(4)

 片岡の日常は相変わらず判を押したように、規則正しく過ぎて行く。ただ違っているのは、朝起きた時にはメイランが台所で調理する音が聞けることだ。
 絵に描いたような幸せな光景、そうだ、正に絵に描いたような生活だった。
 メイランの体調が思わしくないという理由と外国人と結婚したことで部署が変わった片岡の仕事が不規則なものになったことで、寝室が別になり、会話も当り障りのないものに変化して行った。
 端から見れば、婚期を大幅に逃していた男が奇跡的な幸運を手にして、美しい妻を持つことになったという幸せな家庭に見えたに違いない。
 片岡もそう信じていたい気持ちをかろうじて保ちながら、日々脳裏を去来する疑いを掻き消すことで、今の生活が失われないと思っていた。

 続く

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