十五 強制送還(4)

 花村は中止処分された事件を取り扱った者の名前を確認すると、内線電話を掛けるのだった。
「はい、十年以上前になりますが、覚えていらっしゃいますか?はい、記憶力の良いことは承知しています」
 電話口の相手は大きな声で笑って答えていた。会話の内容は受話器を充てていない大渕たちにも丸聞こえだ。
「ああ、覚えているよ。そうか、摘発先の記載が抜けていたか。それと言うのも奴は出頭してきたからだよ。摘発先で押さえた身柄じゃなかったんだ。
 証拠らしきものは会社に残された奴の旅券と登録証明書のコピーだけで、格外(資格外活動容疑)を問うのも難しい事件だったし、奴の言い分にも頷けないこともなかったので、事情聴取した後、厳重注意して中止処分としたんだ」
「その時の稼働先は分かりますか?」
「ああ、手帳を括れば見つかると思うが、だがそれが今になって何で必要なんだ?」

 続く

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