十五 強制送還(8)

 男たちは組織だった流れるような態勢で、ホアホアの捜索を始めた。
 頭と思われる一人の男は、ホアホアの言っていたことを思い出していた。
 ホアホアはここで生まれ変わったと言っていた。
 思うようにならない糞のような日本での生活が、ここで入管の摘発を逃れることができたことで、中国人の中で幸運と優れた才覚を持った男だと認識されるようになったのだ。
ホアホアが絶体絶命の危機から逃れることができた場所、何度も其の武勇伝を聞かされた男は、迷うことなくその場所に向かっていた。
 薄暗い入り口の直ぐ前に階段があった。朽ちかけかかったその階段は、何故かそこだけ埃もなくきれいだった。
 男は自分の推測が的を射ていることを確信して、卑しげな笑みを口元に浮かべると、ゆっくりと階段を昇って行った。

 続く

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