摘発のすすめ(内偵調査)2

 摘発先の内偵調査を実施して、外観を見ることで分かることの最初に、出入り口、窓の配置がある。それらを見て廻れば、凡その内部の様子が把握できる。
 それらを見て何処から打ち込むかをイメージしよう。突入口の広さ、施錠の有無、入り口の扉等の素材は何か、シリンダー錠か単純な掛け金錠か、複雑な錠前なのかによって、着手して踏み込むまでの時間も予測できる。
 打ち込んだときの、その他の窓や裏口などからの逃走を考えれば、そこに何人くらいの人員を配置する必要があるかも考えよう。
 そんなことは摘発計画を立てるときに考えれば良いのだと思ったりしてはいないだろうか。そうではない。
 実際に現場を確認した者の状況把握、それによる計画立案でなければならないものなのだ。
 だから内偵調査をする者は、自分が摘発計画を立案するものとして、調査に当たる気持ちを持つ必要がある。
 何しろ、摘発する方は居宅にしろ、工場にしろ、店舗にしろ、摘発される側よりも内情を知らないものだと考えられる。
 そうした中で、地の利を得ようとするには、可能な限り綿密な内偵調査が必要となる。

 居宅や飲食店舗の内偵調査は、極端に広い場所の内偵とはならない筈だから、立地状況、周辺環境、出入り口等の確認、そしてそれらの記録をとることは、然程困難ではないだろう。
 難しいのは、摘発対象の飲食店舗が集団で存在する場合や、広い敷地に作業場が散在する工場の場合である。
 事業所や工場の場合、周囲に対象を見下ろすような建物があれば、持ち主の了解を取って写真やビデオで記録すると有効である。
 そのような建物がない場合でも、近くから、乃至は離れた複数の場所から写真撮影等をすることで、その状況や雰囲気を捉えることができるだろう。
 但し、人間は立体での認知能力は劣るものの、平面における違和感は敏感に察知するものであるから、上から見下ろすような撮影は大胆に行って然るべしだが、視線を同じくする撮影には機材や撮影者を隠すなどの工夫が必要である。

 ごく稀なケースとしてお聞き願いたいが、ある入国警備官はスーツにネクタイといった風体で、コンクリート成形工場の内偵調査を実施した。
 工場は様々なコンクリート製品を、広い敷地のいたるところで製作・成形していた。正門から入ったその警備官は、点在する作業場を隈なく廻って聞き取りを行い、正門から堂々と出てきた。
 一時間余りの間、工場敷地内を歩き廻ったが、その間、誰にも誰何されることがなかった。
 警備官は、作業場の一つ一つを見て廻りながら、そこで働く外国人と作業内容を聞き出したり、製品の種類や製作するに当たり困難なことなどを話したりしながら、外国人が何処の国籍の人間なのか、凡そ何人くらいの外国人が働いているのかを調査していた。
 隈なく廻ったので、敷地内の作業場や建物の分布も正確に把握でき、最後に事務所の所在を確認することで、関係業者が視察しているように装ったということだ。
 内偵調査と言うと、どこか隠密に、対象者に察知されないように隠れながら行うものと考えがちだが、これほど堂々と調べることで、逆に対象者に疑いを持たれないということもある。

 内偵調査時における服装にも関係することだが、工場の内偵調査と言うと動き易いラフな格好をと考えがちだ。
 しかしスーツ姿というのも工場を訪れる者の中には、取引先の人間もいるであろうから、そのような格好をした者が工場内を動き回っても違和感がなかったとも言える。
 基本的に、内偵調査時の周辺状況に合った服装が望ましいのだが、一見して現場にそぐわない服装も、よく考えてみれば逆に現場に溶け込む場合があるということもあるのかも知れない。
 それは調査官の年令、風体にも関係することでもある。夜間の飲食店舗の内偵調査に、普段着慣れていないスーツ姿で行くよりは、似合っているのであればラフな格好の方が違和感を持たれないで済むというようなことだ。
 但し、いくら似合っていても、不審者じゃないかと思われて、警察に通報されるようなことがあってはならないから、服装に関して言えば、同行者ともどもその対象先の状況をよく見極めなければならない。
 嘗て内偵調査時に、対象先の傍に暴力団事務所があり、内偵中の警備官が事務所の人間に拘束されたということがあった。
 対立する暴力団関係者と疑われたらしいのだが、それが人相によるものなのか、服装によるものなのかは、判然としない。
 人相によるものだとしたら俺も人のことは言えないから、何とも言いようがないが、服装によるものだとしたら、そこは考えた方が良かったのかも知れない。

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